5.日本料理、居酒屋

蛸の壺・本店

 この店の売りは明石だこを使った蛸料理。もちろん明石焼きもやっている。明石焼きは通常のシンプルなものもいいが、ここのオリジナル明石焼き「五目焼き」が僕のお勧め。挽肉と葱が加わることで味が深くなり、プレミアムモルツに良く合う。通常の明石焼きも、今回取材した明石焼き店の中で最も美味しかった。蛸料理では、サッパリとしていて蛸そのものの香りが楽しめる「酢蛸」、ニンニクの芽とバターがベストマッチな「蛸バター」、かなり甘い味付けだが蛸の風味が後を引く「蛸の煮付け」などが旨い。また、中華風葱入り焼き餅「大餅(ダーピン)」は、とても居酒屋とは思えない本格的なもの。大餅自体にしっかりと味がついているので、味噌は少なめにつけて食べるといい。また、この店は蛸料理だけでなく、他のメニューも美味しい。とくに、「本日のお勧め料理」の中にはお宝が満載。まさに、B級グルメの殿堂とも言えるような素晴らしい居酒屋。プレミアムモルツだけでなく、サントリーの山崎を使用したプレミアムハイボールを、ステンレスグラスで出している点も二重丸。昼には、ランチで「玉子焼定食(明石焼き+蛸ご飯+小鉢+味噌汁)700円」もやっている。

神戸市中央区三宮町3-3-3  
電話:078-392-7256
定休日:火曜日
営業時間:12時~22時半
予算:五目焼き(明石焼き)10個700円、蛸酢450円、蛸バター600円
アクセス:鯉川筋を大丸デパート方面に向かい、三宮センター街から南(海側)へ2本目の小路を左折。JR元町駅東口より徒歩3分、阪急三宮駅西口より徒歩7分。

●五目焼き

●蛸の煮付け

海蔵(みくら)

 三宮から離れた住宅街にひっそりとある居酒屋。この店の刺身の素晴らしさには、特筆すべきものがある。このレベルを出せる居酒屋は、僕の知る限り、関西では大阪の「ながほり(ミシュラン1つ星)」くらい。この日は、徳島の「さわら」、「ぐれ」、三陸の「とろ鰹」、三重の「天然岩牡蛎」、長崎の「剣先イカ」、淡路の「天然鯛」、「梅雨ごち」、「あじ」、「おこぜ」、「はも」、「あわび」、「あこう」、「ベラ」、「由良ウニ」など珠玉のラインナップ。刺身の旨さは、切り口とその厚さがとても重要。「とろ鰹」と「さわら」ともにパーフェクトで、その旨さに思わずビックリ!刺身には、擦った本わさびと塩と鹿児島の甘醤油が添えられて出てきたが、通常の醤油が欲しい場合には「生醤油」を頼もう。加えて、この店の素晴らしさは刺身だけでなく、「淡路産煮あなご」など他のメニューもなかなか美味しいこと。特に、一合炊き釜飯(この日は太刀魚と早松茸)は、最後の締めとしていい。カウンター8席の他、2人掛けのテーブル席が2つと小上がりに4~6人の掘りごたつ席が2つある。おまかせコースは5000円から。

神戸市灘区大石東町5-6-10  
電話:078-882-5228
定休日:日曜、祝日の月曜
営業時間:17時~21時半
予算:その日の刺身は全て時価。釜飯(一合炊き)1050~1280円、天然本マグロの鉄火丼980円、淡路産煮あなご680円
アクセス:阪神大石駅出口を出て、右の信号と橋を渡ったら右折。淡路信用金庫角を左折し、突き当たりを右折。イトマンスイミングスクールの北(山側)向かい。阪神大石駅(阪神三宮駅から4つめ、8分)より徒歩5分。

京料理 たか木

 打ち水された店の前に立つと、そのセンスの良さに呆然。ジャパネスク・モダンとでも言おうか、デザイナーズ・レストラン本で紹介されてもおかしくないような佇まい。さすがは芦屋!店内はカウンター席とテーブル席から成り、和室がないことや個室が1つしかない点が日本料理店としては珍しい。店主・高木さんの作る料理は、建物に負けないくらい見事。素材を見極める目と深淵な美意識が感じられる。最後を締める土鍋炊きご飯は艶々で、久しぶりに本物の銀しゃりを味わった。また、日本酒の品揃えが素晴らしく、この日は「十四代・大吟醸」や「十四代・龍の落とし子」、「黒龍・大吟醸」など26蔵が揃っていた。

芦屋市大原町12-8  
電話:0797-34-8128
定休日:日曜日、第4月曜日
営業時間: 12時~13時半、18時~20時
予算:10000円~(昼のみ5500円のコースあり)
アクセス:JR芦屋駅北出口を出て、高架橋を通ってラポルテ北館へ。その階段を1階まで下り、左(東側)へ向かう。池田泉州銀行の信号を左折し、ファミリーマートを過ぎた交差点を右折してすぐ。JR芦屋駅(JR三宮駅より新快速で7分)北口より徒歩7分。

伊万栄(いまえ)

 夜はほとんど人通りのない場所。どうしてここにこんな店が?初めて訪れた方なら、店の外観からはとても想像できない料理の質の高さとコストパフォーマンスに驚くだろう。八寸から水菓子に至るまで、きっと満足して頂けるはず。平日はかなり空いていたが、もっと流行ってもいい店。但し、料理は店主1人で作っているので、混んだときにこのレベルを保てるかどうかは不明。安いコースでもいいが、昼なら5250円、夜なら7350円以上がお勧め。一言いわせてもらえるなら、給仕する女将さんの料理の説明があれば、なお良いのだが。

神戸市灘区城内通4-2-22  
美登利荘1階 
電話:078-881-3883
定休日:不定休
営業時間:12時~13時半、17時半~20時半
予算:昼3670円、5250円、夜5250円、7350円、10500円
アクセス:阪急王子公園(阪急三宮駅から2つめ、4分)西口を出て、TSUTAYAの横を通り、高架下に沿って西の三宮方向に向かい、最初の信号を左折。ファミリーマートが見えたらその向かい(看板は無い)。

神戸 座屋(いざりや)

 高知から進出した店。高知と言えば、土佐の皿鉢料理が有名だが、こちらは高知近海の魚介を用いた通常の日本料理。現代版の高級居酒屋とでも言おうか、居酒屋と割烹の中間のような存在だ。この神戸店の他、高知本店と東京に銀座店がある。料理長の大道さんはまだ若いが、作る料理はなかなか美味しい。特に、毎日高知から空輸される鰹を藁であぶり、刻みニンニクなどの薬味と塩で食べる「鰹の塩たたき」は、高知に伝わるポン酢以前の食べ方で、初めて体験する美味しさ。また、「ウツボの唐揚げ」は、知らないと鶏モモの唐揚げ?と間違ってしまうような食感。「あなごの一夜干し」は、ワサビをつけずスダチだけで味わうと、濃厚かつジューシーな穴子本来の味がして美味しい。「ドロメ」は関東で言うシラスのことで、カタクチイワシの稚魚。高知では生を酢醤油で食べ、関東のように生シラス丼としては食べないようだ。一階はカウンターのみで、二階は最大12人までのテーブル席がある。単品よりコースで頼む方が安めの料金設定になっている。

神戸市中央区下山手通3-15-5  
電話:078-322-1308
定休日:月曜日
営業時間:17時~23時半
予算:あなごの一夜干し1000円、ウツボの唐揚げ1500円、コース:季節のお料理4500円(鰹の塩たたき増しの場合5200円)、6000円、料理長のおまかせ(要予約)8000円
アクセス:JR元町駅東口より鯉川筋を上り、サンクスの北向かい角。阪急三宮駅西口より徒歩10分、JR元町駅東口より4分。

懐石料理 三木

 決して立派とは言えない狭めの店内。しかし、店主を含めた調理スタッフのキビキビとした動きは、それを感じさせない。料理も、先付けからデザートのカスタードプリン、最後を締める薄茶に至るまで、5250円のコースでも十分満足できる構成となっている。また、最後を締めるご飯を複数のメニューから選べる点も良い。このサービスは、東京ミシュランガイドの1つ星和食店「櫻川」と同じだ。料理だけでなく、最後に店主が見送る姿勢も含めて、この店のおもてなしの心に、貴方もきっと満足できるはず。

神戸市中央区中山手通3-7-29  
 揚ビル1階
電話:078-321-0818
定休日:月曜日、第2日曜日
営業時間:11時半~14時、17時~20時半
予算:特選コース5250円、おまかせコース(要予約)8400円から。昼のみ旬彩コース3990円と御茶つぼ弁当2620円がある。
アクセス:トアロードを登り、角にローソンのある交差点を過ぎ、トアロードホテルを過ぎるとすぐ左。阪急三宮駅西口、JR元町駅東口より徒歩7分。

小猿

 店主の山野さんは「たん熊」出身の新進気鋭の料理人。店の入っている建物は古く、エレベーターを使わずに細い階段を降りると、「大丈夫なの?」と思うほど入るのに勇気が要る。割烹なので料理は基本的にアラカルト(単品料理)。コースを希望する場合には、前日までに予約が必要。使用している素材は上質で、かなりのこだわりを感じさせる。店主はまだ若いだけに料理は発展途上だが、将来性を十分感じさせる。店の顔とも言えるお椀は、吉兆系のような一口目からのアタックはないが、敢えて濃さを抑え、アフター(余韻)を意図するタイプ。料理は塩味がビシッと決まって申し分ない。カウンター7席、4人掛けテーブル2つの小さな店だけに予約は必須。

神戸市中央区中山手通1-2-3  
 レミービル地下1階
電話:078-321-1914
定休日:月曜日
営業時間:17時半~23時半
予算:お造りの盛り合わせ(5種)2500円、コースは5250円から
アクセス:阪急三宮駅西口から生田ロードを上り、東急ハンズ東側にある東門街の入り口を通り過ぎ、右(東)へ向かう。靴修理店「靴専科」が見えたら角を左折してすぐ。鉄板焼きの「楽」の隣り。阪急三宮駅西口より徒歩5分。

あめ婦

 店内はまるで洋食店のようなカジュアルな雰囲気。料理はジュレを用いたり、刺身をカルパッチョ風に出したりして、斬新さや柔軟さが感じられる。派手さこそないが、料理の基本がしっかり押さえられており、好感が持てる。決してコストパフォーマンスが良い店とは言えないが、カウンター席、テーブル席、個室の全てが備わっていて使い勝手は良さそう。

芦屋市大原町7-9  
電話:0797-23-3600
定休日:水曜日
営業時間: 11時半~14時、17時~21時半
予算:5250円、7350円、10500円、15750円の4コース。ランチタイムのみこの他に3675円の「あめ婦ご膳」があり。
アクセス:JR芦屋駅北出口を出て高架橋を通り、すぐ右の阪神タクシー乗り場の階段を下る。ラポルテ東館のミスタードーナッツ前を通って北へ進み、「Bar ラッフィナート」の角を右折。信号を東側に渡ってすぐ右。JR芦屋駅(JR三宮より新快速で7分)北出口より徒歩3分。

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山荷葉(さんかよう)

 店主の板垣さんは、茶懐石で有名な「招福楼」の出身。京都の「桜田」など、「招福楼」系の店は、不要なものを極力削ぎ落とした一見素朴な料理。イメージ的には、陽性の「吉兆」と対極にある陰性の料理なので、人によって好みが分かれると思う。コースの中で最も印象的だったのは「椀もの」で、恐らく神戸で一二を争う美味しいさ。今回6000円のコースを試してみたが、量、内容、質ともに満足できた。しかし、店の雰囲気がチープなため接待に向かない点や、料理は店主1人でやっているので混むと2時間以上かかること、最後の白飯に味噌汁が付かないこと、給仕する時に料理の説明がないことなど、いろいろ改善すべき点も多い。

神戸市中央区山本通5-13-9  
 再度ハイツ地下1階
電話:078-341-0037
定休日:火曜日
営業時間:11時半~14時半、17時半~21時
予算:昼 松花堂弁当2100円、コース3500円、6000円、9000円、夜は6000円、9000円。おまかせコース10000円~(昼夜共に前日までの予約)。
アクセス:相楽園西側の登り一方通行を上がり、突き当たりの諏訪山公園の通りを左折し、デイリーヤマザキのY字路を左に行くとすぐ右の建物。JR元町駅西口より徒歩15分。JR三宮駅からタクシーで900円くらい。

食楽 板垣

 吉兆系である大阪「桝田」出身の店主・村上さんの作る料理は、吉兆系料理としてはほぼパーフェクトだ。思わず、「京都 吉兆」で食べているのでは?と錯覚してしまうほど。吉兆系らしくお椀は濃厚で旨みがあり、刺身を加えた八寸も「桝田」らしい華やかさが感じられる。この満足感は、「神戸 吉兆」や「桝田」でも体験できなかった感覚だ。八寸と一緒に盛られる小さいめの刺身や狭めの室内空間などに、不満を抱く方もいらっしゃるかもしれないが、値段を考えると、今回取材した和食店の中では、ナンバーワンと言ってもいいほどのコストパフォーマンス。また、最後に供される芦屋「ウーフ」のダージリン・ファーストフラッシュなど、細部まで計算し尽くされた満足出来る味わいだ。席は4~5人入れる個室の他、カウンター5席とテーブル6席を合わせても最大約15名のみ。なお、店内が禁煙であり、カードが使えない点や、昼はコースがないのでご注意を。

芦屋市茶屋之町4-11  
電話:0797-22-6825
定休日:月曜日、火曜日の昼
営業時間: 11時半~14時、17時半~20時半
予算:昼 松花堂会席弁当2800円、夜 ミニ会席4800円、おすすめ会席6500円、おまかせ会席(要予約)8000円
アクセス:JR芦屋駅南出口を出てタクシー乗り場の前を通り、タバコ屋の角を左折して「茶屋之町北」交差点の信号を渡る。左側のカフェを過ぎ、「黒鍋ダイニングSAMASAMA」の2階。向かいに、僕の考える兵庫ツートップ・スイーツ店「パティスリー プラン」がある。JR芦屋駅(JR三宮駅より新快速で7分)南出口より徒歩7分。

植むら

 店主・植村さんの料理は大胆である。真薯の椀ものに大ぶりに切った数種の野生のキノコを入れたり、汲み湯葉にモロヘイヤソースを使ったり、ズワイガニをグラタンにするといった変化球。かと思えば、最後の締めは土鍋で炊いた白米と味噌汁といった直球ど真ん中のシンプルさ。この柔軟性こそが彼の料理の真骨頂なのかもしれない。また、東京(本店は金沢)の「浅田家」で修行したことがあるためか、11月から冬にかけては、レギュラーコースとは別に、「セコガニ(コウバコガニ)」が入ったカニのコースのも出しているとのこと。

神戸市中央区中山手通1-24-14  
 ペンシルビル4階
電話:078-221-0631
定休日:水曜日
営業時間:12時~14時、18時~22時
予算:昼5250円、夜6000円~10000円
アクセス:阪急三宮駅西口から北野坂を山側(北)へ向かい、2つめのローソンのある中山手通り信号を渡り、「北の綿雪」を過ぎて進むとすぐ左側のビル。阪急三宮から徒歩12分。

和懐食 かなやま

 料理は見た目も華やかで美味しく、かなりのハイレベル。最後を締める季節の土鍋ご飯などは、数種類の中から選ぶことができて楽しい。但し、雰囲気はやや高級感に欠けるので、接待と言うより、本当に美味しいものを食べたいと思う人たちと行きたい。ご夫婦であろうか?お二人でやっているにもかかわらず、料理は淀みなく出され、この点は素晴らしい。しかし、女将の料理の説明は少し力が入りすぎで、もう少し簡潔で良いのではないだろうか。むしろ、おしぼりを途中で換えるなどの基本的サービスに力を注いだ方が、更に素晴らしい快適な店になるのではと思う。なお、全席禁煙であるのでご注意を。

神戸市中央区中山手通1-9-11  
 パインビル2階
電話:078-393-1566
定休日:日曜祝日
営業時間:12時~13時、18時~21時半
予算:昼3800円、5800円(昼のみ前日までの予約必要)、夜5800円、8400円
アクセス:JR三宮駅西口、阪急三宮駅西出口を出て、生田ロードを上がり、生田神社近くの東門街入り口を上がる。ローソンを過ぎ、「エビラ薬局」の角を右折。「あわじ」のある次の角を左折し、「源平」のあるY字角を右へ行くとすぐ右のビル。阪急三宮駅より徒歩5分。

玄斎

 外からは目立たない隠れ家的な店。中に入ると、正面に和食店としては珍しいV字型の木のカウンターが鎮座している。カウンター席の他に個室(6席のテーブル席)もある。実は、店主の上野直哉さんは、あの伝説の浪速割烹「喜川」の創始者・上野修三さんの次男である。父親譲りの料理は、ひと言で言うならシンプルで簡潔。盛りつけは素朴ながら、そこには日本料理のエッセンスが詰まっているのだ。

神戸市中央区中山手通7-5-15  
電話:078-351-3585
定休日:不定休
営業時間:12時~13時、17時~21時
予算:昼 5250円~7350円、夜8400~15750円
アクセス:地下鉄県庁前駅の西3出口を出て、下山手通を右(西)に進む。しばらくすると、道は左に緩やかに曲がって歩道橋が見えるので、ENEOSの信号を右折する。そして次の信号をすぐ右折し、次の角を左折するとすぐ左。地下鉄県庁前駅より徒歩10分。阪急三宮西口、JR元町駅よりタクシーでワンメーター。