留学報告(デンマーク・オーフス大学)

鈴木 佳代

 2014年4月から、夫とともにデンマークのオーフス市にあるオーフス大学へ留学させていただき、現在、Sektion for Orofacial Smerte og Kæbefunktion(= 英:Section of orofacial pain and jaw function)の研究室で「 Smerte = 痛み」の研究に携わっています。

 デンマークのオーフス市と言っても、聞き慣れない方が多いかもしれません。デンマークは北欧四か国の最南端に位置し、ユトランド半島、シェラン島、フュン島など大小の島から構成される小さな国です。デンマークは「マッチ売りの少女」「人魚姫」などで知られるアンデルセンの生まれ故郷であり、またレゴブロックの発祥地でもあることから“おとぎの国”と称されることもあります。また、その福祉制度の質の高さから、多くの幸福度調査でたびたび一位となり、“世界で一番幸せな国”とも呼ばれています。国全体の人口は560万人で、北海道の人口とほぼ同じです。その中でも私が暮らしているオーフス市は、隣国ドイツと国境を接するユトランド半島の中ほどにあり、コペンハーゲンに続くデンマーク第2の都市です。オーフス市の人口は30万人程で、海岸も近いので、函館あたりを想像していただけるといいかもしれません。決して都会ではありませんが、治安も良く、のんびりと毎日を過ごすにはとても住みやすい街です。

 さて、研究に関して少しお話しようと思います。先ほどもお話したように、私の所属している研究室は「痛み」を主に研究しており、そこに所属する多くの研究者が、痛みの伝達物質であるGlutamateやそのGlutamateを誘発するNerve growth factor( NGF)、または、神経過敏を引き起こすCapsaicinやMentholなどを使用し、実験的に疼痛モデルをヒトで作り出し、痛みの実験を行っています。そのお互いの実験の被験者というのも、私たちの大事な仕事の一つですので、若干痛く辛い思いも何度かしましたが…。誤解がないように一応お伝えしておきますが、決して危険な実験をしているわけではありません。そんな研究室で、私は疼痛患者の評価に広く使われているQuantitative sensory testing( QST)、その中でもMechanical pain threshold( MPT)を主に研究しています。

 実験自体は、機械的刺激に対し、痛みがあるかないか、その痛みがどれくらいの痛みかを評価していくという、とても簡単なものですが、実験のプロトコールの組み方、被験者への説明の方法、データの統計処理の方法、プレゼンの方法、英語論文の書き方、そして論文投稿の方法まで、学ぶことは数多くあります。私の英語能力の低さから、今までの人生で一番多くの恥をかきつつも、少しずつ前に進んでいます。

 デンマークに来て一年半が過ぎ、とうとう折り返し地点に来てしまいました。帰国した際に少しでも成長したな、と先生方に思っていただけるよう、残りの一年半、夫と競い合いつつ、協力しつつ頑張って行こうと思っています。

 最後に、この場を借りまして、夫とともに留学したいという我儘を許して下さった石田教授をはじめ医局の先生方に感謝いたします。本当にありがとうございました。帰国後は少しでもみなさまのお役に立てるよう、また一から頑張るつもりですので、どうぞよろしくお願い致します。