医療技術がいかに進歩し、診断ツールがどれほど洗練されようとも、私たち医師の原点は常に「目の前の患者様を救いたい」という臨床現場での切実な思いにあります。私はこれまで、網膜硝子体手術のエキスパートとして、増殖糖尿病網膜症、増殖性硝子体網膜症(PVR)、難治性網膜剥離、そして難治性黄斑円孔といった、失明に直結する重症例の治療に全力を注いでまいりました。
病棟医長を務めた直近の3年間では、手術室の運用効率化とチーム医療体制の抜本的な改革を断行し、個人の執刀・指導を含む硝子体手術件数を年間657件(従来の約1.7倍)へと飛躍させました。この北海道内で最多の実績は、広大な医療圏における「最後の砦」としての責務を果たすとともに、若手医師に多様かつ豊富な修練の場を提供する基盤となっています。
「なぜこの病態が生じるのか」「なぜ同じ治療を施しても治癒する人と再発を繰り返す人がいるのか」
しかし、数多くの難症例と向き合う中で、「なぜこの病態が生じるのか」「なぜ同じ治療を施しても治癒する人と再発を繰り返す人がいるのか」という、既存の教科書やガイドラインでは答えの見つからない疑問(Clinical Question)に直面し続けてきました。これらの疑問を研究室(Bench)に持ち帰り、科学的な手法で解明し、得られた知見を再び臨床(Bedside)へと還元する。この「臨床と研究の循環」こそが、私が追求する Physician-Scientist(臨床医科学者) の在り方であり、教室員と共有したい核心的な価値観です。
本稿では、私が取り組んできた「眼循環生理学」「Pachychoroid(パキコロイド)病因論」「AI(人工知能)解析」という3つの軸を中心とした研究の軌跡と、それらがどのように融合し、未来の眼科医療を変えようとしているのかについて、最新の研究成果を交えて包括的にご報告いたします。