9.スイーツ、カフェ

博多 鈴懸(すずかけ)本店

 創業90年という老舗和菓子店とは思えないモダンな店内には、ショップ(菓舗)に隣接してカフェ(茶舗)がある。カフェの店内にはカウンター5席の他、ゆったりとしたテーブル席があってかなり広めである。話を伺うと、2008年に現在のビルに移転してきたという。ランチタイムであったが、店内にはスイーツ店と思えないカレーの香りが漂い、かなりの違和感を憶える。客のほとんどがOLで、彼女たちの大部分は何故かカレーライスを食べているのだ。
 カレーは通常のカレーと、福岡~北九州にかけての有名B級グルメ「焼きカレー」の2種類がある。メニューを見ると、カレーも含めてスイーツメニューも和洋折衷。カレーも試してみたかったが、お腹がいっぱいだったので、まずは「冷やしぜんざい」を注文。冷たい汁粉であるにも関わらず、小豆の香りがしっかりと感じられ、小豆の粒も残っていて甘さも丁度良かった。また、鈴の形をした香り高い最中と一緒に食べても美味しかった。白玉はスマートボール大の球形で、どちらかと言えば、平べったい方が僕の好みである。なので、もしも食べるなら「冷やし葛きりぜんざい」の方が良いかも。僕のお勧めは「かすていらバター焼き」。カステラをバターで焼き、濃厚なキャラメルアイスを添えたもの。食べ方は、キャラメルアイスを載せて食べるのだという。バターで表面がカリカリに焼かれたカステラにキャラメルを載せて食べると、冷温のコントラスに加えて食感のコントラストも際立って美味しい。和のスイーツ店でありながら、その柔軟な発想が素晴らしい。
 ちなみに、注文を受けてから本わらび粉で作られる「蕨餅」も美味しいらしい。福岡の他、東京の新宿伊勢丹と名古屋のJR名古屋タカシマヤのも支店がある。(2013年1月追加)

福岡市博多区上川端町12-20 ふくぎん博多ビル1階  
電話番号:092-291-0050
定休日:無休 
営業時間:11時~20時(ショップは9時から) 
予算:かすていらバター焼き840円、蕨餅790円 
アクセス:地下鉄空港線・中洲川端駅の川端方面出口へ進み、5番出口の左側の階段から出るとすぐ目の前。中洲川端駅から徒歩1分。 
最寄りのランドマーク:地下鉄空港線・中洲川端駅、川端方面出口 
お勧めポイント:福岡の良質な和のスイーツ店

珈琲美美(こーひーびみ)

 自家焙煎された深煎りのハイローストで有名な珈琲店。シアトル系コーヒー全盛の現在では考えられないが、この店が開店した1977年当時は、未だアメリカンコーヒーが全盛の時代であった。当初はなかなか客がつかず大変だったらしいだが、次第にその美味しさが受け入れられ、美味しいという噂が九州全土へ、さらに全国にまでとどろいたという。僕は20年以上前に山本益博さんの著書でこの店のことを知り、その頃に一度訪れたことがある。その頃は現在の店でなく、確か大名の近くにあったような気がする。しかも、こんなに現代的な綺麗な店ではなく、昭和の風情を感じさせる下町の純喫茶といった感じであった。3年半前に、護国神社と福岡城址(大濠公園・鶴舞公園)に挟まれた緑の多いこの地に移転したそうである。店の1階には大きなロースターが置かれ、コーヒー豆を販売するショップが、そして、2階に山小屋風の喫茶室がある。2階に上がると、年老いて今なお元気なマスターの森光さんが座っていた。しかし、現在は奥さんなのか?お母さんがドリップを担当しているようだ。
 この店のコーヒーは、ネル・ドリップで抽出される。これは、森光さん修行した東京の名店「吉祥寺もか」の標さんが、ネル・ドリップの先駆者であったことが影響している。森光さんは「モカ」のスパイシーな香りをとことん追求し、イエメンやエチオピアまで何度も足を運んだという。なので、コーヒー豆はエチオピア産とイエメン産のモカがメインで、モカだけでも5種類もある。僕の一押しであるイエメン産「バニーマタル・モカ」は、ビターな中にも甘い余韻が感じられ、“モカ=酸味”という僕のモカの概念を変えてくれた。これに対し、エチオピア産の「ハラール・モカ」は、これにほんのりとした柔らかい酸味が加わり、僕のイメージに近いモカであった。1番人気はブレンドの「中味」 で、ブレンドは、「淡味 → 中味 → 濃味 → 吟味 → 趣味」の順でローストが強くなる。ハイロースト好きの僕は、今回「濃味」を注文。酸味と苦みのバランスが良く、ふくよかな香りで、神戸「御影ダンケ」のバターコーヒーを彷彿させた。コーヒーとともに味わいたいのは「フルーツケーキ」。 シットリときめ細やかで、中のドライフルーツのバランスが絶妙。甘さも丁度良く、複雑さと奥深さもあり、ありそうでなかなかない完成度の高いフルーツケーキである。メニューの中で最も目を引くのは、「水だしギシルコーヒー」。これはコーヒーのルーツ国・イエメンで日常飲まれている飲み物で、コーヒー豆を包む“穀(ギシル)”の部分を使ってコーヒーを抽出し、それにスパイスと砂糖を加えた温かい飲み物。コーヒーと言うよりもむしろ、「チャイ」や「生姜湯」に近いイメージの飲み物。もしも、ハイローストコーヒー好きの方へ贈るなら、1階のショップでコーヒー豆を購入してお土産とすれば、素晴らしい福岡土産となること請け合い。(2012年11月追加)

福岡市中央区赤坂2-6-27  
電話番号:092-713-6024 
定休日:月曜(但し、祭日の場合には翌日) 
営業時間:11時~19時半(但し、2階の喫茶室は19時まで) 
予算:バニーマタル・モカ750円(100g 1000円)、濃味630円(100g 750円)、フルーツケーキ380円 
アクセス:地下鉄空港線・大濠公園駅5番出口を出て堀に沿って明治通りを進む。すぐに信号のある大手門交差点を右折して、大濠公園の中に入る。平和台競技場前の信号を過ぎ進むと、右側に住宅街が見えてくる。更に進むと、左に池と右に駐車場が見えてくるので、突き当たり信号(護国神社前交差点)を左折するとすぐ左側。大濠公園駅より徒歩15分。 
最寄りのランドマーク:護国神社 
お勧めポイント:ハイローストタイプのコーヒーとしては、日本最高レベルの珈琲店

ジャック 大濠店

 フランス・アルザスで修行した有名パティシエが経営する洋菓子店。この大濠店の他、赤坂に大名店もあるが、一軒家のようなロケーションのこちらがお勧め。店内のインテリアは白とダークブラウンを基調としており、とても落ち着いた雰囲気。また、狭いながらもイートインスペースもある。
 まずはショーケースを見てケーキを選び、飲み物を注文し、精算してから席に着くシステム(飲み物とケーキのセットだと100円引き)。テーブル席もあるが、外向きに配置されたカウンター席の方が落ち着く。初めに言っておくが、この店のケーキは全体的にやや甘めだ。店名にもなっている「ジャック」は、洋なしのムースをキャラメルのムースでサンドしたもの。瑞々しさにやや欠けるが悪くない。「ピスタ・アンタンス」は、ピスタチオのムースの中にチョコムースなどが入っていてこれもなかなか美味しい。「リュビ」は、ピスタチオムースとチョコムムースにフランボワーズがアクセントに。濃厚で甘めだが素直に美味しい。カプチーノも店のイートインにしてはなかなか。(2012年11月追加)

福岡市中央区荒戸3-2-1  
電話番号:092-762-7700
定休日:火曜、第1月曜 
営業時間:11時~19時 
予算:ジャック420円、ピスタ・アンタンス、リュビ480円 
アクセス:地下鉄空港線・大濠駅1番出口を出て明治通りを進む。ミスタードーナッツが角にある「西公園入口」交差点を右折すると、すぐ左側に見える。大濠駅より徒歩3分。 
最寄りのランドマーク:西公園入口交差点 
お勧めポイント:ビジュアル的にも美しい洗練されたケーキ