4.中華料理

横浜と並び、中華街(南京町)を擁する神戸は、本場香港や北京で食べるようなプロ的な中華とは違う、どこかホッとする家庭的な店が多い。しかし近年、客のニーズに合わせ、本格的な料理を供する店も増えつつある。われわれ客側も、エビチリといったどこでも食べられる日本的な定番料理ではなく、神戸に来たのなら、いつもは食べることのない料理を注文しよう。

上海料理 新愛園

 友人の黒田先生に、「ふかひれの刺身」が美味しいから騙されたと思って食べてみてと言われ、昨年訪れた。現店舗の向かいには旧店舗「上海料理 愛園」がある。そういえば小学校の頃、父親と2人で旧店舗に行った記憶がある。ほとんど料理のことは憶えていないが、家庭的でさほど広くない店だった様に思う。向かいにある新店舗の方もそれほど広くはないが、1階だけでなく2階にも客席がある。メニューには値段が表示されていないので、初めて行く人はちょっと怖いかもしれないが、予算と食べたいものを言えば、おばさんが気軽に相談に乗ってくれる。神戸中華独特の料理と言えば、「ふかひれの刺身」やカリ・フワっとした具だくさんの「春巻き」、「ミル貝の味つけ」などである。この店のお勧めはずばり!海鮮料理。予算が許せば、「ふかひれのお刺身」と「渡り蟹と春雨の土鍋煮込み」、「春巻き」、「伊勢エビのXO醤炒め」、「明石鯛の中華風姿作り」の順でお勧めである。「ふかひれの刺身」は刺身と言っても醤油につけるのではなく、「白油鶏」のように刻みネギが入ったごま油風味の塩ダレで食する。特に「渡り蟹と春雨と土鍋煮込み」は、東灘区にある「中国料理 Kirin」を遙かにしのぐコクと旨みにあふれていた。

中央区北長狭通3-2-10  
電話: 078-331-0924 
定休日:不定休
営業時間:11時40分~15時、16時半~20時40分 
予算: コース5000円~20000円/人(2名様より)
アクセス:①阪急三宮駅西口を出て、「生田ロード」入り口前の交差点を西側(左)に渡り、左に高架を見ながら進む。「赤萬餃子」、「がんこ寿司」、「こがんこ」を過ぎ、セブンイレブンの角を右折するとすぐ右。阪急三宮駅西口より徒歩4分。②JR元町駅東口を出て高架山側の交差点に出る。交差点を「かつや」が見える東側(右)に進み、右に高架を見ながら進むと、左にセブンイレブンが見えるので、角を左折するとすぐ右。JR元町駅東口より徒歩2分。  
最寄りのランドマーク:自家製特製焼豚「新生公司」、「こがんこ」
お勧めポイント:神戸最高レベルの海鮮中華

鴻華園

 中華とベトナムのフュージョン料理店。店内はまるで大衆食堂のようだが、「活カニのベトナム風炒め」など時価のこだわり料理もある。「エビのマヨネーズ和え」、「鯛の刺身」、「ミル貝の味つけ」、「レタスのベトナム風エビミソ炒め」、「海鮮焼きビーフン」、「さとうきびのエビ包み揚げ」、「ベトナム風トムヤムクン」など、店のお勧め料理はどれも魅惑的。どの料理も料理人のセンスが感じられ、あまりの素晴らしさに、僕は3日間連続で通ってしまったほど。「越南炒飯」は、揚げ葱の香ばしさに山クラゲのようなコリコリ感が最高だし、エビと挽肉の入った「ベトナム風蒸し春巻き」は、皮がプヨプヨして、まるで広東料理の腸粉のような感じ。蒸し春巻きを、ニョクマム入りの特製ピリ辛タレにつけて食べると、もうビールがすすむこと請け合い。土日祝日以外の昼はランチをやっており、混むので予約が絶対に必要。

神戸市中央区中山手通2-21-12  
電話:078-231-7079
定休日:火曜日
営業時間:11時半~13時半、17時~21時
予算:ベトナム風蒸し春巻き945円、越南炒飯(ベトナム風チャーハン)840円
アクセス:トアロードを上り、NHKの交差点を右折。大韓民国総領事館の前を通り、次の信号を左折してすぐ裏の小路。阪急三宮駅西口より徒歩7分、JR元町駅東口より7分。

杏杏(シンシン)

 奥に12~13人入るテーブル席がある他は、カウンター9席の小さな店。料理は基本的にお母さんが作り、サービスはお父さんの担当。息子さんと思われる若い男性が作る日もあったが、どちらも腕は確かである。「皮のパリッとした焼きブタ」は、この日は皮が固すぎで、「水餃子」と「腸詰め」はパサついていたので今回はお勧めしない。しかし、これ以外の料理はどれもとても美味しかった。特に、「カニ身入り冬瓜煮込み」、「野菜のカキソース炒め」、「エビのライスペーパー春巻き」、「蒸し鶏」などは必ず食べて欲しい。そして最後の締めは「中華粥」か「咸魚炒飯」。中華粥は滑らかでコクがあり、ほぼ完璧な出来。咸魚炒飯は干して発酵した塩魚が香り、咸魚炒飯としては日本一だと思う。デザートの杏仁豆腐は多少ザラつく感じがするが本格的な味。とにかく、ひと言で表すなら、神戸の良心を感じさせる素晴らしいB級中華店。小さな店なので、予約しなければ入れないことも。さらに、全面禁煙なのも好感が持てる。

神戸市中央区下山手通4-13-14  
電話:078-322-3339
定休日:日曜日、第3月曜日
営業時間:11時半~13時半、17時~21時
予算:蒸し鶏800円、魚生粥1000円
アクセス:JR元町駅東口より鯉川筋を山側に進む。サンクスの信号を渡り、左側にある上海料理「莉莉」の角を左折。しばらく進むと角に赤い星が見えるのが目印。JR元町駅東口より徒歩12分 。

私房菜 広東料理 えん

 オーナーシェフ・奥野さんの作る広東料理は実に本格的。乾物などの材料も自ら香港まで仕入れに行くほどである。日本ではあまり知られていない咸魚(干し塩魚)を使った蒸しハンバーグやレタス入り炒飯(メニューに載ってないが頼めば作る)などもある。お勧めは、「蒸し鶏の冷製」、「しらさ海老のガーリック蒸し」、「海鮮三種の自家製XO醤炒め」、「レタスのオイスターソース炒め」、「ミンチのレタス包み」、「海老ミンチと豆腐の蒸し物」、「海老のマヨネーズ炒め」など。事前に食べたいものを言っておけば柔軟に対応してくれるが、フカヒレの姿煮だけは戻すために1週間前の予約が必要。

神戸市中央区中山手通1-27-10  
 天成ハンター坂ビル2階
電話: 078-242-0789 
定休日:日曜
営業時間:17時半~22時半(ランチは予約時のみ、2名様より)
予算:蒸し鶏の冷製1260円、海老のガーリック蒸し1260円、季節のコースAプラン3675円、Bプラン5250円
アクセス:阪急三宮駅西口を出て、生田ロードを山側に進む。生田神社の横の東門街を上がって、大きな通り(中山手通)に出たところで信号を山側に渡る。「にしむら珈琲店」横の通り・ハンター坂を上ると左側に「神戸ステーキレストラン 伊奈」が入っているビルの2階。阪急三宮駅より徒歩10分。

アムアムホウ

 店内は中華料理店とは思えない、まるで喫茶店のような狭いつくり。まずは「よだれ鶏」を注文し、生ビールを飲みつつ待つ。オーナーシェフ・松本さんの料理はとても繊細で、よだれ鶏は、ラー油や香菜、揚げたナッツ、鶏のモモ肉のバランスが絶妙。隠し味にウスターソースが入っているのでは?というような想像力をかき立てる味わいに仕上がっている。「四川麻婆豆腐」は、痺れるような花椒の香りに加え、豆鼓が脇役として深みを引き出している。また、葉ニンニクを使っている点も実に本格的で、シェフの本物へのこだわりを感じる。「担々麺」は、JR神戸駅近くの「海月食堂」とは対照的に、サッパリしていて拍子抜けするが、スープを飲んでいるうちに、後から重厚な深い味わいが押し寄せてくる。小さいご飯が付いてくるが、確かにスープと一緒に食べたいと感じさせる。料理だけでなく、デザートに至るまでどれも美味しいのに、点心だけが今一つだったのが心残り。

神戸市灘区深田町3-4-13  
 アルカディア六甲1階
電話:078-891-6171
定休日:月曜日(毎月1回不定休)
営業時間: 11時半~14時、17時半~21時
予算: 昼は1300円、2000円、3500円の3コースで、アラカルトはないが、追加メニューはあり。夜は3800円、5800円の2コースとアラカルト。
アクセス:JR六甲道駅改札口出て右へ、メイン六甲のエスカレーターを下り1階に出て左へ。信号を渡って左へ進み、24時間パーキングの角を右に曲がった次の角。JR六甲道駅(JR三宮駅より快速で3分)南口より徒歩3分。

天天

 店内は中華料理店というよりラーメン店の様で、まさにB級の広東料理店。スタッフは全員中国人らしく、店主以外は片言の日本語しか話せないようだ。恐らく、雰囲気やサービスを求める方には向かない店である。しかし、店主は彼の人気料理番組「料理の鉄人」にも出たことがあるというから驚き。料理のメニューも「豚足の特製味噌煮込み」、「上海蟹のみそと海鮮蒸し」、「エビと金針菜の炒め」、「チャーシュー入りローメン」など魅力的なものが多数。ここで食べるときには、いつも頼むようなありふれたメニューではなく、現地っぽいディープな料理を頼まなければ魅力は半減するだろう。前菜ではチャーシューが滅法旨い。締めはやはりコクのある飛魚子焼き飯(トビッコチャーハン)。昼のランチタイムは混むので避け、行くなら空いている夜に。

神戸市灘区王子町1-2-15  
電話:078-882-3958
定休日:月曜日
営業時間:17時半~22時半
予算:上海蟹のみそと海鮮蒸し1500円
アクセス:阪急王子公園駅西口を出て左の南側(信号のある方)へ。信号は渡らずに、高架沿いの道を東へ向かい100m。阪急王子公園駅(阪急三宮駅から2つめ、4分)西口から徒歩1分。

民生 広東料理店

 南京町にある大衆料理店ながら、一つの素材を好みに応じていろいろな味に調理してくれ、高級店に負けない美味しさである。南京町の中華料理店の中でも、間違いなく最上の店であろう。特にお勧めは、上海カニのミソ入り豆腐、白えびのピーフォンタン、わたり蟹の炒めソバ、芥蘭や空心菜などの中国野菜炒め、そして日曜限定の名物春巻き。

神戸市中央区元町通1-3-3  
電話:078-331-5435
定休日:月曜日
営業時間:12時~15時、17時~29時
予算:上海カニのミソ入り豆腐(小)1800円、白えびのピーフォンタン(小)1800円、わたり蟹の炒めソバ1800円
アクセス:JR元町駅東口を大丸デパート方面(南側)に向かい、東急ビズフォードホテルの横の南京町入り口から入り、直進するとすぐ右側。JR元町駅東口より徒歩数分、阪急三宮駅西口より徒歩10分。