2.そば焼き、お好み焼き、そばめし

全国的にお好み焼きと言えば大阪風と広島風が有名だが、実はたこ焼き同様、兵庫県のお好み焼きと焼きそば(神戸では通常の焼きそばを「そば焼」と呼ぶことが多いが、新開地の某店では日本蕎麦をすき焼きのタレで焼いたものをそう呼ぶことも)は、地域ごとにかなりのバリエーションがある。神戸のお好み焼きは、一見大阪風のようだが、大阪のように具をかき混ぜて焼く厚めの「混ぜ焼」ではなく、広島風のように、薄い生地を焼いた後に、キャベツや具を並べて焼く「薄焼き」。戦前の神戸では、薄焼きのお好み焼き全てを「にくてん」と呼んでいたが、長田区では、牛すじとコンニャクを甘辛く炊いた「ぼっかけ(スジコン)」薄焼きのことをそう呼んでいたらしい。また、高砂市を含む播磨地域のにくてんには、角切りに茹でて味付けをしたジャガイモが入っている。姫路が発祥の「どろ焼き」や「ぐじゃ焼き」は、もんじゃ焼きと大阪風お好み焼の中間的存在で、例えるなら、明石焼きのお好み焼きバージョン。三宮にある「喃風」や「鼓なもん」などがその代表店。また、全国的にも有名となった「そばめし」は、長田区にある「青森」が元祖。さらに、兵庫県の粉ものは、その具にも特長があり、有名な「明石蛸」や「ぼっかけ」、「かす(牛の腸を揚げたもの)」の他、「大貝(ウチムラサキ貝:通称大アサリ)」なるレアものもある。ソースも「プリンセスソース」、「ばらソース」、「ブラザーソース」、「オリバーソース」、「タカラソース」、「ニッポンソース」、「日の出ソース」、「七星ソース」、「二見ソース」、「ドリームソース」、「ママソース」、「ワンダフルソース」、「オトヒメソース」、「名城ソース」など、多数の地ソースが存在し、まさに粉もんパラダイス兵庫を象徴している。なお、地ソースは神戸土産としても格安でいい。地元の人は「どろソース(辛口たまりソース)」を勧めるが、独特な癖があり、僕はお好み焼きには「とんかつソース」の方が合うと思う(ちなみに、関西には中濃ソースは存在しない)。JR新長田駅近くのグルメシティ(ダイエー)のソース売り場を調査してみたところ、日の出ソース、ブラザーソース、ばらソース、タカラソース、オリバーソース、名城ソースなどの地ソースが、大手メーカーを圧倒していた。それにしても、神戸の多くのお好み焼き店では、テーブルに「味の素」がごく普通に置かれているのが何とも不思議。一体いつどのように使うの?

購入は以下からも。 
●「みなとまち酒店」神戸市中央区吾妻通2丁目2-1、TEL 078-232-4177、
http://shop-online.jp/minatomachisaketen/index.php 
●「ユリヤ」神戸市長田区五番町8-1-6、TEL 078-577-0231、
http://www.yuriya.co.jp/

ゆき

 ばらソースを使う店が多い長田にあって、ブラザーソースにこだわっている。ほとんどの客が地元客のようで、「(ホール担当の女性)キョウコちゃ~ん(娘さん?)」を連発。地元客ではない僕に、親父さんが食べ方を指導してくれたり、帰り際に、おばちゃんがニッコリと「ありがとう!また来てな~」とアイコンタクト。長田ナンバーワンの繁盛店ながら、ホスピタリティーを感じる素敵な店だ。お勧めは、ぼっかけの入った「ねぎすじ焼」。醤油かソースかどちらか聞かれるので、迷わず醤油と言おう。2/3ほど食べたら、後はソースを少しつけて食べると2倍楽しめていい。それにしても、このようなレベルの高いねぎすじ焼は、大阪十三の「やまもと本店」くらいしか思い当たらない。この店でのもう一つの楽しみは、漬けダシに浸った創作神戸流たこやき「ぼったこ」。まずは半分をそのまま味わい、残り半分にソースを加え、神戸流で楽しもう。さらに余裕があれば、最後は「そばめし」で締めたいところ。

神戸市長田区久保町4-2-5  
電話:078-611-4785
営業時間:11半~14時(夜営業は無し)
定休日以外も休みの日があるので電話確認をしてください。
予算:ねぎすじ焼580円、ぼったこ(たことぼっかけ入りたこ焼き)500円、そばめし600円
アクセス:JR新長田駅の改札口を下り、突き当たりを左に曲がって広場前に出る。ピフレ西側の通りを南(海側)へ進み、高速下の信号を渡る。ケーズデンキの入っているマンションの南側交差点にある「西神戸センター街」を入るとすぐ左。JR新長田駅(JR三宮駅より4つめ約10分)より徒歩6分。

●ねぎすじ焼

●たこ焼き

京屋

 マンションの1階にあり、おばちゃんが1人で頑張って焼いている。客のほとんどは、おばちゃんと顔見知りのようだ。しかし、僕のような地元以外の客にもとてもフレンドリーに接してくれるので、分からないことがあれば何でも聞けばいい。この地域のお好み焼き店では、ソースの他にピリ辛のコチジャンを使うのが特徴なので、地元のプリンセスソースとコチジャンをたっぷりと塗って食べよう!今まで「かす焼」を食べて一度も旨いと思ったことがなかったが、この店のかす焼を食べて、初めてその美味しさを実感できた。しかし、そばめしは今一つなので、追加で食べるなら、牡蠣や大貝などにタコや肉スジなどをトッピングした焼きそばの方がお勧め。驚いたことに、この店は飲み物を一切置いていない。もしも、お茶やビールが飲みたければ、近くの店か自販機で買って持ち込むシステムらしい(持ち込み料無料)。

神戸市中央区南本町通6-1-23  
電話:078-231-1653
定休日:月曜日、木曜日
営業時間:17時~21時
予算:かす焼670円、トッピング  50円:ねぎ盛り、100円:ねぎ焼き・いか・豚・玉子、150円:タコ・エビ・すじ・貝柱、200円:牡蠣・かす・肉スジ・大貝
アクセス:阪神春日野道駅の西出口4を出てガスタンク前の信号を渡り、日産を過ぎ、北本町通6丁目歩道橋手前の角を左折。タバコ屋を過ぎ、すぐ右のマンションの1階。阪神春日野道駅(阪神三宮駅から1つ目)より徒歩7分 。

すえちゃん

 わずか10席ばかりの狭く小さな店。キャベツたっぷりのかす焼は、かすからの油が表面に滲んでカリッと焼かれていて美味しい。かすの風味と食感が上手く引き出されている。地元の人はこれだけでは満足出来ないのか、さらに豚すじや肉すじの焼きそばを注文していた。プラス50円で、播磨風ジャガイモのトッピングも可能。

神戸市東灘区住吉宮町1-2-18  
電話:078-811-2009
定休日:月曜日、第4,5日曜日
営業時間:11時半~15時半、17時~19時半(日曜祭日は16時閉店)
予算:油かす焼670円
アクセス:阪神住吉駅を出て、左側高架下沿いの道を東へ進む。「止まれ」の標識のある5叉路の斜め左一方通行を直進し、突き当たりの5階建てマンションの一階。阪神住吉駅(阪神三宮駅から8つ、17分)より徒歩5分 。

美作 神戸北野店

 食べログで良くないとの記載もあったが、三宮駅付近のお好み焼き店の中では決して悪くない。値段が高いとの声もあるが、テナント料が高く深夜までやっている三宮駅周辺店としては、高めながらも許容範囲。むしろ、春日野道の「あっちゃん」のように、かす焼き450円、ウーロン茶80円という驚異的安さの方が、他県民の僕としては驚きだ。まずは、砂ずりや肝焼きを注文し、それをあてに生ビールを頂き、スジのうすねぎ焼きを醤油で注文すれば、きっと満足出来るはず。物足りない方は、かす焼やそばめしを追加すればいい。ソースは2種類置いてあるが、黄色の方はローズマリーの様な風味がして美味しくなかった。

神戸市中央区中山手通1-8-1  
 明開ビル1階
電話:078-332-0983
定休日:年中無休
営業時間:17時半~翌3時
予算:すじうすねぎ焼950円
アクセス:JR三宮駅西口、阪急三宮駅東口を出て、北野坂を上がってすぐ左。三宮駅より徒歩3分。

えびら

 

 昭和30年創業の老舗店。「美作」同様、深夜まで営業しており、三宮で飲んだ後にふらりと立ち寄れる。深夜になると、焼いているお父さんにかなり疲労の色が見られ、集中力が落ちないか心配になってしまう。お勧めは、すじねぎ焼(醤油)。普通に美味しく、神戸の薄焼きのスタンダードとも言える味。お腹に余裕があれば、まずは生ビールとともにとん平焼を注文。とん平焼は、店によってかなりのバリエーションがあるが、この店のものは玉子がたっぷり入った薄焼きタイプで、やや甘めのソースで頂く。また、他の神戸のそばめし同様、この店のそばめしもソースがかなり薄めなので、ソースを追加するか、紅ショウガと共に食べなければならない。

神戸市中央区中山手通1-15-7  
 東門エースタウンビル1階
電話:078-331-0516
定休日:日曜祝日
営業時間:12時~翌2時
予算:すじねぎ焼800円
アクセス:JR三宮駅西口、阪急三宮駅西出口を出て、生田神社近くの東門街入り口を上がる。ローソンを過ぎ、「エビラ薬局」の角を右折。「あわじ」のある次の角を左折し、「源平」のあるY字角を右すぐ。阪急三宮駅より徒歩5分。

長田本庄軒 三宮センタープラザ店

 神戸B級グルメの聖地といえばここセンタープラザの地下街。エスカレーターで地下へ降りると、店の前にはいつも行列ができている。長田本庄軒は全国に讃岐うどん「丸亀製麺」を展開するトリドールが経営している「ぼっかけ焼きそば」の専門店。ぼっかけとは、神戸長田が発祥の牛すじとコンニャクを甘辛く煮た、いわゆる「スジコン」と呼ばれる食べ物で、焼きそばやお好み焼きの他、ラーメンやカレーなどにもトッピングされる。まずは自動券売機で券を買い、列に並ぶ。鉄板の前では3人の焼き手が、手を休めることなく焼きそばを焼いている。自家製の中太ストレート麺はその都度茹で上げられているため、富士宮焼きそばとはまた違った独特のコシがある。具はぼっかけの他、かつお粉、天かす、九条葱、キャベツなどが入っている。とにかくソース味が濃いため、薄味好みの方や高血圧の方には不向きな食べ物である。店舗は関西のみならず関東にも多数展開しているので、近くにある方は食べなくても良い。

神戸市中央区三宮町1-9-1  
 センタープラザ(東館)地下1階
電話:078-391-3314
定休日:無休
営業時間:11時~20時
予算:ぼっかけ並500円、ねぎぼっかけ600円
アクセス:阪急三宮駅西口を出て南(海側)に向かい、信号を渡る。ファミリーマート裏のセンタープラザ(東館)の地下に下ると目の前。阪急三宮駅西口より徒歩3分、JR元町駅東口より徒歩数分 。

風祭

 「お好み焼きや焼きそばもあるが、「そばめし専門店」と言い切っていいくらい、ほとんどの客はそばめしを注文する。店内は4人掛けのテーブル席が3つしかなく、かなり狭め。せっかくの神戸なので、スジのそばめしを注文。中盛りは100円増し、大盛りは200円増しだが、運ばれてきたそばめしは、普通盛り(ノーマル)でもかなりのボリューム。小食の方なら小盛り(100円引き)で良いかも。そのまま食べても美味しいが、ソースが濃いめなので、中心に載せられた生卵を混ぜて食べると味がマイルドになる。さらに、青のりや魚粉をかけて食べれば、メリハリがついてなお美味しい。硬めに炊かれパラっとしたご飯と、刻まれシットリとした焼きそばのコントラストが実に美味しい。

神戸市中央区三宮町2-11-1   
 センタープラザ(西館)
 北向き(山側)1階
電話:078-321-0667
定休日:水曜日
営業時間:11時半~21時(16時~17時休憩)
予算:スジそばめし900円
アクセス:阪急三宮駅西口を出て南(海側)に向かい、信号を渡る。センタープラザ(東館)に入らず、ファミリーマート沿いに歩道を西側に向かうとすぐ。阪急三宮駅西口より徒歩3分、JR元町駅東口より徒歩数分。