16.モーニング、喫茶

これまでグルメバイブルで様々なモーニングを取り上げてきたが、今回の学会はモーニングの本場・名古屋での開催。ちなみに名古屋では、モーニング事情が少し異なる。一般の喫茶店のモーニングセットとコーヒーは、別メニュー・別価格であるが、名古屋ではモーニングの時間帯にコーヒーなどの飲み物を注文すると、頼んでもいないのにトーストやゆで卵、サラダなどが付いてくる。つまり、この時間帯のコーヒーとモーニングセットの値段は同じなのである。このお得なシステム故に、愛知県では休日には家で朝食を食べず、家族でモーニングを食べる習慣もあるらしい。ちなみに、愛知県のモーニング激戦区は、意外にも名古屋市内でなく、近郊の一宮市と豊橋市なのである。また、最近では関東にも進出して全国的にも有名となった「コメダ珈琲店」は、名古屋市内を歩くと至る所で看板を見かけるほどメジャーな存在なのである。

吉岡コーヒー

 中年の男性店主が1人でやっている小さな喫茶店。今年で開店5周年を迎えるらしい。それにしても、名古屋は喫茶店の多い街だということは知っていたが、この店の50m圏内には喫茶店が2軒もある。他の2店に比べて、マンションの1階にあるこの店は、目立たない上に看板もなく分かりにくい。この日は梅雨の平日の午前9時だったせいか、店内は僕以外の客は一組と空いていた。店内は白と木を基調とした狭いながらもセンスの良い雰囲気。4人掛けテーブルが1つと2人掛けテーブルが1つ、そしてカウンター6席。コーヒーはブレンドが3種、ストレートが8種類ある。コーヒーはペーパーフィルターによるドリップである。モーニングの場合はトーストの他、小さなマンゴージュースがつく。それ以外の時間帯には、コーヒーを頼むとクッキーが2枚ついてくる。モーニングのトーストは3種(バター、シナモン、エッグ)の中からチョイスできる。この日僕が選んだのは「シナモントースト」。バターと蜂蜜に加え、上にシナモンパウダーがかかっている。もう少しパンが厚ければ3つシャチホコのパーフェクトだが、値段を考えれば文句は言えない。特に、シナモンと蜂蜜バターが意外に良く合っていてお勧めである。この日頂いた「フレンチブレンド」は、ハイローストの苦さの中にもほんのりとした甘い香りがあり、思ったよりもマイルドだった。意図的なのかコーヒーの温度は低めである。さらに、ストレートのお勧め「エチオピア」は、程良い酸と柔らかな苦みのバランスが絶妙で良かった。

瑞穂区駒場町4-9-2 メゾン日向1階   
電話:052-853-1162
定休日:木曜
営業時間:7時~19時 (当分の間、水曜日は18時まで)
予算:フレンチブレンド450円 、エチオピア500円(モーニング7時~11時)
アクセス:市営地下鉄・桜通線「桜山駅」5番出口を出ると「桜山補聴器」が見えるので、その角を右折。最初の交差点右角にあるマンション1階。桜山駅から徒歩1分。 
最寄りのランドマーク:名古屋市立大病院 
お勧めポイント:コーヒーが美味しいこだわりのモーニング

日本茶カフェ ピストーチャ

 名古屋で美味しい日本茶が飲みたくなったらこの店に行こう。この日は煎茶「松」を頼んでみたが、一煎目の鮮烈なフルーティーな香りと甘み、そしてその余韻が素晴らしかった。二煎目は強烈な香りは無くなるが、柔らかなタンニンを味わえる。また、二煎目以降は湯冷まし代わりのガラスコップをコースターにのせ、セルフで入れるスタイル。女性店主はお湯の温度にかなりこだわっており、3つの温度設定(70、80、98℃)のポットが置いてある。もちろんお茶毎にお勧め温度は異なっており、煎茶は80℃がお勧めとのこと。僕のお勧めは、煎茶「松」か「玉露」+日替わりの生菓子(時価)の組み合わせ。「茶だんご」や「干菓子」はそれほど良くはない。昼にはお茶を使ったいろいろな食事や軽食も楽しめ、お土産にはお茶の粉を使って作る「お茶のジャム」セットなどがある。

中村区名駅5-4-14 花車ビル北館1階   
電話:052-563-8280
定休日:日曜・祝日、6月の第2月曜
営業時間:平日:7時半~19時、土曜:10時~17時
予算:煎茶「松」350円、玉露630円、生菓子は時価
アクセス:市営地下鉄・桜通線「国際センター駅」3番出口を出て右へ進み、ビル角をすぐに小路を右折。ビルに沿って進むと右角に見える。国際センター駅から徒歩1分。
最寄りのランドマーク:花車ビル
お勧めポイント:日本茶専門の喫茶店

加藤珈琲店

 モーニング先進地域の名古屋だが、モーニングの有名店で飲むコーヒーは、決して美味しいと思ったことがない。しかし、その定説を覆してくれたのがこの店。ネット販売もしており、楽天でもトップクラスの自家焙煎コーヒー店であるが、実際の店舗は通常の喫茶店よりも小さいくらい。通常のモーニング(Aセット)は、399円のブレンドコーヒーにトーストとゆで卵が付いてくるが、せっかく名古屋に来たのなら“小倉トースト”とゆで卵が付く「名古屋セット」にしたい。コーヒーは、一杯ずつペーパーフィルターでドリップされ、2杯分くらい入りそうなガラスポットに入れて出される。小倉餡はそれほど風味がないが、全粒粉の厚めのライ麦パントーストとの相性は抜群で、今回取材した“小倉トースト”の中では最も美味しく、僕の名古屋ベストモーニングに認定したい。ちなみに、差額を払えばブレンドコーヒー以外の飲み物にも変更が可能である。また、作家の村上春樹氏がお気に入りだというもう一つの名古屋名物「珈琲ぜんざい」は、“美味しいか?”と聞かれれば、“微妙”と答えたくなるような味。この種の喫茶店にしては珍しく禁煙であることも評価したい。

東区東桜1-3-2 さくらビル1階   
電話:052-951-7676
定休日:無休
営業時間:平日:7時~19時、土日・祝日:8時~17時(モーニングは10時半まで)
予算:名古屋セット525円
アクセス:市営地下鉄・桜通線「久屋大通駅」出口3Aを出てBalossaを過ぎ、サンクスを過ぎるとすぐ右。久屋大通駅より徒歩1分。
最寄りのランドマーク:Balossa
お勧めポイント:僕が選ぶ名古屋モーニング・ナンバーワンの喫茶店

甘味喫茶 おかげ庵 葵店

 「コメダ珈琲店」は愛知喫茶におけるガリバー的な存在で、店舗数は他店の追随を許さないほど。「甘味喫茶 おかげ庵」は、愛知県内にだけ展開する「コメダ珈琲店」の和風喫茶で、愛知県に5店舗ある。名古屋市内にはこの葵店の他、新開町店(052-883-1588)、篠原橋店(052-361-6888)、茶屋ヶ坂店(052-722-2888)の計4店舗。「コメダ珈琲店」の名物は「シロノワール」で、これはデニッシュにソフトクリームをのせた食べ物。デニッシュとは言ってもサクサクのパイ生地ではなく、シットリとしたパンのような感じ。食べる度に、“これがサクサクのパイ生地であれば最高なのになあ”と思ってしまう。この「おかげ庵」では、通常「コメダ珈琲店」で出しているバニラソフトの「シロノワール」ではなく、抹茶ソフトバージョンを食すことができる。この抹茶ソフトクリームは、抹茶の風味が強く濃厚で非常に美味しい。なので、どうせ食べるならこの店の「抹茶シロノワール」の方がお勧めである。さらにつけ加えるなら、抹茶ソフトが入ったスイーツ類ならどれも美味しい。通常の「コメダ珈琲店」でのモーニングは、“半トーストとゆで卵” が付くごく普通のものだが、この店では、半トーストをしっとりフワフワのコッペパン「ころんぱん」に、ゆで卵を「小豆餡」に変更が可能。モーニングタイムを過ぎると飲み物にはピーナッツ菓子が付くが、このサービスも名古屋特有のもの。更に特筆すべきは、この店ではモーニングだけでなく、名古屋メシの「鉄板スパゲティ(この店ではレトロスパゲティという名前)」やうどん、雑炊、自分で炙る「おだんご」や「いそべ餅」など、喫茶店とは思えないくらいの多彩なメニューが朝から味わえるのだ。また、他にもいろいろなお得なセットが数多くあり、愛知のガリバー「コメダ」恐るべしと改めて思い知らされた。

東区葵3-12-18   
電話:052-936-0015
定休日:無休
営業時間:8時~22時半(モーニングは11時まで)
予算:ブレンドコーヒー400円(モーニング)、レトロスパゲティ(鉄板スパゲティ)720円
アクセス:①市営地下鉄・東山線「千種駅」2番出口を出てすぐ角を左折し、JR中央線路沿いに進む。「Hotel pure」を過ぎた次の通りを左折、「URBAN SQUARE HOTEL TAOS」の並び。千種駅より徒歩5分。②市営地下鉄・桜通線「車道駅」3番出口を出て「野田塾」側へ信号を渡る。「野田塾」の前を過ぎるとすぐ「おかげ庵」の看板が見える。車道駅より徒歩2分。
最寄りのランドマーク:野田塾名古屋校、アーバンスクウェアホテルTAOS
お勧めポイント:愛知限定のコメダ珈琲店の和風喫茶

日本茶喫茶 茶縁

 この近くにある寿司店「龍文(今回は落選)」を訪れたときに、たまたま見つけた店。この車道で80年営業してきた「みどりや茶舗」が和風カフェ「茶縁」としてリニューアルした店のようだ。カフェでは煎茶や抹茶、ほうじ茶を楽しむことができ、煎茶の中にはアイスで注文できるものも。アイスで注文すると、デキャンタの中に入れられて出てくるので、香りを楽しめるようワイングラスに注いで飲む。スイーツは、春~夏限定の抹茶ソフトクリームを使ったものか、冬なら「くるみもちと黒糖わらびの2種盛り」や「葵最中」がいい。ちなみに、茶舗なので店頭でのお茶の販売も行っている。

東区葵2-9-15   
電話:052-936-3353
定休日:木曜
店頭販売:9時~18時、カフェ:10時~17時半
予算:くるみもちと黒糖わらびの2種盛り350円、葵最中200円、煎茶・大納言600円(温、冷とも)
アクセス:①市営地下鉄・東山線「千種駅」1番出口を出てメルパルクの信号を渡る。そして次の北欧倶楽部が見える「ハロー」の信号を右折するとすぐ。千種駅より徒歩3分。②市営地下鉄・桜通線「車道駅」4番出口を出て「大塚屋」の信号を左折。直進すると右側に看板が見える。車道駅より徒歩3分。
最寄りのランドマーク:メルパルク、大塚屋
お勧めポイント:ホスピタリティあふれる和風カフェ

自家焙煎コーヒー豆&ケーキ 
coffee Kajita

 「からめ亭・本店」の帰りに見つけたコーヒー店。この店のコーヒーは、僕がこれまで名古屋で飲んだコーヒーの中で一番美味しかった。ブレンドコーヒーは6段階の焙煎状態から選べる。注文すると、マニアックそうな若い男性店主が、まずは豆を挽き→ペーパーフィルターでドリップしながら香りを確認→カップをお湯で温める→カップを拭いてコーヒーを注ぐ、という行為を同時に2杯までのペースで繰り返す。ブレンド以外の豆は、各地区あるいは農園別の豆が揃っている。中にはオークションで落としたものも含まれる。加えて、この店のスイーツもハイレベルである。特に焼き菓子が秀逸で、ドライパイナップルとフレーク生地をホワイトチョコで固めた「パインクリスプ」は、お土産やご贈答品として最適。但し、ハンドメイドなので早めの予約が必要である。

名東区高社1-229   
電話:052-775-5554
定休日:水曜、木曜
営業時間:11時~20時
予算:パインクリスプ210円
アクセス:市営地下鉄東山線「一社駅」1番出口を出て「B&Dドラックストア」側に信号を渡る。直進し、「愛知日産」交差点を右折すればすぐ。一社駅から徒歩5分。
最寄りのランドマーク:愛知日産
お勧めポイント:こだわりのコーヒーとスイーツが味わえる店

コーヒーとサンドイッチ 
コンパル メイチカ店

 名古屋モーニング定番の“小倉トースト”もあるが、この店では名古屋メシのもう一つの雄・エビフライを使った「エビフライサンド」が朝から食べられる。「エビフライサンド」はエビフライを3本使用しており、シャキシャキしたコールスローと特製タルタルソース、玉子焼き、トーストが一体となった絶妙な美味しさ。また、この店のコーヒーの入れ方は独特で、厚めのネルを使い、一度抽出したコーヒーをもう一度通して再抽出する“かえし”と呼ばれる方法を用いる。また、アイスコーヒーは香りを保つために氷と別にホットで出される。先ずはホットでそのまま楽しみ、その後に氷に入れてアイスコーヒーとして飲むのがお勧め。名古屋中心部には何軒かの支店があり、とても使い勝手が良い。飛行場に行く前や新幹線に乗る前などにテイクアウトしても利用しても良い。

【金山店(052-331-0070)】  
【栄東店(052-951-8151)】  
【栄西店(052-951-5188)】  
中村区名駅3-14-15 名駅地下街
電話:052-586-4151
定休日:無休(元旦を除く)
営業時間:8時~21時
予算:エビフライサンド890円 
アクセス:JR、近鉄、名鉄「名古屋駅」地下で直結。JR名古屋駅から徒歩1分。
最寄りのランドマーク:名古屋駅
お勧めポイント:エビフライを使った「エビフライサンド」が朝から食べられる。