6.ひつまぶし お勧めベスト8

鰻と言えば、関西や関東のイメージがあるが、名古屋を歩けば街の至る所で鰻屋を見かける。調べてみると、人口辺り最も鰻屋が多いのは三重県・津市のようである。恐らく、愛知県や岐阜県を中心とした地域とその周辺の三重県北部や静岡県西部にかけての地域では、僕らの想像を超える鰻文化が根付いていて、鰻はよく食べる身近な食べ物なのであろう。名古屋の鰻は、基本的に蒸さずに焼く関西風。従って、皮がパリッとしていて焦げ目が香ばしい。「ひつまぶし」は、これを細かく刻み、お櫃のご飯にまぶしてかき混ぜて食べるためにこう呼ばれる。蒸す作業を行う関東風だと身が柔らかくて刻めないため、名古屋駅近くにある「うな善」のような関東風を出す店は、刻まずに供する。容器にお櫃を用いることやかき混ぜることが、結果的に鰻を蒸すという工程を加えるため、関西風の焼き方は「ひつまぶし」と実に相性がいい。1杯目は山椒をふりそのまま鰻丼として、2杯目は海苔や山葵、シソ、ゴマなどの薬味を加えて、3杯目は出汁を注いでお茶漬けにして食べる。どの店も通常の「ひつまぶし」に加え、「上」、「特上」などのランクがあるが、これは鰻の質とは関係なく、鰻とご飯の量が違うにすぎない。通常はランクが上がると鰻の量が1.5倍くらいになるようだ。行列店ではまずは並ばずに店内に入り、店員に名前を告げるか名前を書かなければならないこともあるのでご注意を。それにしても、前回の取材を合わせると、これまで計二十数軒の鰻店を取材し、遠くは一宮市や刈谷市の有名店までも訪れた。

第1位 まるや本店 名駅店

 多店舗展開しているうえにデパートのレストラン街。この条件で美味しい店などあるはずがないが、驚いたことに実際食べてみると、これまで食べたどの有名店より美味しかった。九州(鹿児島、宮崎産)を中心とした国産鰻と、それを育てる水にこだわっているという。“ひつまぶし”は最後にだしをかけて茶漬けにす るため、タレが甘ければ最後の茶漬けが台無しになるのだが、たまり醤油を使ったこの店のタレは、茶漬けにしても美味しくなるよう絶妙に計算されている。「上ひつまぶし(ご飯300グラム、うなぎ1本)」の他、「特上ひつまぶし(ご飯350グラム、うなぎ1.5本)」、「ミニひつまぶし」など、細かく分量が選べるのは女性やひとりご飯の者にとってありがたい。名古屋中心部には他に新栄店 (052-251-2808 新栄のホテルコムズ向かい)と天白本店  (052-847-2008 鶴舞線・塩釜口駅より徒歩5分)があるが、新栄店はファストフード店のようなカウンタースタイルなので、ゆったりできる名駅店の方がお勧め。しかし、名駅店は開店前か閉店近くでなければ30分以上待たされる人気店なので、味や雰囲気よりも待たない方が良いと思う人は天白本店の方が良いのかも。2012年の4月27日には、中部国際空港セントレア内ちょうちん横町に (0569-38-0803 )支店がオープンした。これからは飛行機に乗る前に、この店のひつまぶしが味わえるようになった。(2012年6月修正)

中村区名駅1-2-1 名鉄百貨店9階レストラン街    
電話:052-585-7108
定休日:不定休(名鉄百貨店に準ずる) 
営業時間:11時~22時 
予算:上ひつまぶし2380円 
アクセス:JR、名鉄、近鉄名古屋駅から徒歩1分 
最寄りのランドマーク:JR、名鉄、近鉄名古屋駅 
お勧めポイント:全てにバランスがとれた“ひつまぶし”


新栄店   
愛知県名古屋市中区新栄1丁目1-31
052-251-2808
新栄のホテルコムズ向かい


天白本店   
愛知県名古屋市天白区植田西3丁目1212 サンスカイル植田
052-847-2008
鶴舞線・塩釜口駅より徒歩5分

第2位 うな春

 鰻屋とは思えない洗練されたインテリアの店内。カウンターに座れば、注文を受けた職人が鰻を焼く姿を、ガラス越しに見ることができる。「木屋」同様、タレは辛口で濃いめであるが、最後に茶漬けで締める“ひつまぶし”としてはかなり良い。しかし、それ以外の蒲焼きや鰻丼などで食べるとしたら、やはり濃いと感じてしまうかもしれない。全体を通して御飯、煎茶、吸い物に至るまで細部にこだわりを感じ、鰻屋にしては珍しいくらい店員の対応もいい。「まるや本店 名駅店」とともに、今最も旬な店だと思う。まだあまり知られていないためか、3回とも予約なしでも入れるくらい空いていたが、近い将来人気店になることは間違いない。

東区泉1-7-32 エメラルド泉1階    
電話:052-962-8055
定休日:火曜(祝日の場合には翌日休み) 
営業時間:11時半~14時、17時半~20時半 
予算:ひつまぶし2940円 
アクセス:市営地下鉄・桜通線「高岳駅」1番出口を出て「ガスト」側へ信号を渡る。「ガスト」を過ぎた角を左折するとすぐ右側。高岳駅から徒歩3分。 
最寄りのランドマーク:ガスト高岳店 
お勧めポイント:新進気鋭のモダンな鰻店

第3位 いば昇

 「あつた蓬莱軒」と並ぶ超人気店。古き昭和を感じさせる店内に入ると、香ばしい鰻の香りが鼻腔を抜け、視覚と嗅覚両方の期待度バロメーターが一気に上昇する。その期待を裏切らない鰻は、皮目がカリッと焼き上がっていて美味しい。今や名古屋めしの代表である「ひつまぶし」は、実はこの店の三代目が考案したもの。つまりこの店が元祖なのだ。栄にもこの錦の「いば昇」と同名の店があるが、関係のない別な店なのでご注意を。

中区錦3-13-22   
電話:052-951-1166
定休日:日曜、第2・第3月曜 
営業時間:11時~14時半、16時~20時 
予算:ひつまぶし2750円 
アクセス:市営地下鉄・東山線、名城線「栄駅」3番出口を出て直進し、信号を左折。「ホテルトラスティ」を過ぎて信号を渡り、「カゴメ本社」、「中納言」、「焼肉屋坂井」を過ぎると、すぐ右側のビルの谷間に佇む店。栄駅から徒歩5分。 
最寄りのランドマーク:焼肉屋坂井 
お勧めポイント:元祖“ひつまぶし”の有名店

第4位 うな富士

 “まる徳”と言われている天然に近い極太鰻にこだわっている店。この“まる徳鰻”を使った“ひつまぶし”はメニューに載っていないが、注文すれば4000円で変更可能である。“ひつまぶし”の鰻は厚みがあり、皮がカリッとしていてボリュームも十分。今回食べた鰻は少し泥臭さを感じたので、ミル付きの山椒を多めにかけなければならなかったが、これがなければ言うこと無しの出来。無料で肝吸いもついてくるが、これもなかなかのレベル。値段を度外視しても味を追求したい方は、時価なので聞くのも恐ろしいが、予約すれば浜名湖や長良川、四万十川の天然鰻“ひつまぶし”も可能とのこと。また、この店もかなりの行列店なので、行くなら早めの時間がお勧め。

昭和区白金1-1-4 プレザアント白金   
電話:052-881-0067
定休日:水曜、第1・第3火曜 
営業時間:11時~14時、17時~20時 
予算:ひつまぶし2600円、上ひつまぶし3500円 
アクセス:市営地下鉄・名城線「東別院駅」2番出口を出て、高速に沿って山王通を直進。ローソン、川、ENEOSを過ぎ、JR中央本線の高架橋を潜る。「キタガワ」のある信号を過ぎて100m先に見えるマンションの1階。東別院駅から徒歩12分。 
最寄りのランドマーク:キタガワ 
お勧めポイント:天然鰻に近い“まる徳”や天然鰻のひつまぶしが味わえる店

(同点)第4位 うなぎ 宮

 かつて大須観音横に風情ある一軒家の鰻店があった。その名を「宮田楼」と言い、名古屋グルメバイブル「ひつまぶし・お勧めベスト8」の第4位にもなったことのある老舗店だ。その後閉店となり、この店と千種区の「三越星ヶ丘店」8階にある「うなぎの宮田」の2つに分かれてしまったという。
 店内はテーブルが4つと奥に小上がりがあるが、思っていたよりもかなり狭い。経緯については詳しくわからないが、この店の職人こそかつての「宮田楼」の味を受け継ぐ人物であるらしい。確かに前店同様、鰻には臭みがなく、備長炭で焼かれた鰻はサクッとふっくらしている。タレも若干甘めで「宮田楼」の味である。なので、山椒やネギを加えて食べた方が美味しく感じられる。また、御飯も含めて全体の完成度が高い。好みかもしれないが、茶漬けをいただく時には若干醤油を足して食べた方が、さらに引き締まった味になって美味しい。名古屋国際会議場からも近くて便利である。(2015年11月追加)

名古屋市熱田区比々野町70
電話番号:052-682-6168
定休日:水曜
営業時間:11時〜14時、17時〜19時半
予算:ひつまぶし3000円
アクセス:地下鉄名港線・日比野駅2番出口を出て左へ。「泰文堂書店」を過ぎ、「日比野交差点」を左折すると50mほどで左側にある。日比野駅から徒歩3分
最寄りのランドマーク:地下鉄名港線・日比野駅
お勧めポイント:「宮田楼」の味を受け継ぐ店

間口の狭い小さな店ランチセットもある店内は4つのテーブル席と奥に小上がりがあるメニューひつまぶし焼き上がりはお見事備長炭で焼かれた鰻はサクッとふっくらしているひつまぶしの薬味タレはやや甘めなので山椒やネギを加えて食べた方が美味しい茶漬けをいただく時には若干醤油を足して食べた方が、さらに引き締まった味になって美味しい

第6位 うなぎ 薩摩

 よさげな黒の外観の店内に入ると水槽があり、そこはまるで郊外型・居酒屋の様な感じ。メニューや店のカードを見ると、店名通りの鹿児島産鰻を使用しているようだ。季節によっては天然鰻も取り扱っているらしい。メニューの中には、ふぐや鮮魚の刺身などが並んでおり、この日のお勧めも「手こね寿司」なので、特に鰻がメインということではないらしい。しかしそれに反して、出てきた鰻は皮はパリッとして身はふっくらとしていて、専門店を遙かに上回る美味しさ。“ひつまぶし”としての評価はこの程度だが、鰻丼としての評価ならば、“超お勧め!!”で、トップ3の一角を狙えるくらい美味しい。なので、“ひつまぶし”に固執しなければ、「鰻丼」か「うなぎづくし三昧」の方が良いかもしれない。

中川区東中島町5-137   
電話:052-355-5501
定休日:水曜(祝日の場合には翌日木曜休み) 
営業時間:11時~14時、17時~22時 
予算: 上ひつまぶし2500円、うな重2300円、うなぎづくし三昧2500円 
アクセス:①市営地下鉄・東山線「高畑駅」5番出口を出て左へ進む。「サークルK」、「東建」、「幸楽苑」を過ぎ、350m先の左側の黒い建物。高畑駅から徒歩15分。②あおなみ線「南荒子(みなみあらこ)」駅出口を出て左へ進み、信号を右折。「幸楽苑」の信号を左折し、350m先の左側の黒い建物。南荒子駅より10分。「四川料理 相翔」、「御かど屋」を過ぎ、「トヨタレンタリース」、「吉野家」の角を右折するとすぐ。荒子駅から徒歩5分。 
最寄りのランドマーク:幸楽苑、ヤマナカ新中島 
お勧めポイント:鰻丼としての評価ならトップクラスの日本料理店

第7位 イチビキ

 今回取材した鰻店の中で最もボリュームがあり、コストパフォーマンスで選べば更に上位に入ってもおかしくない体育会系鰻店。店内に入るとうっすら霞むくらいの煙が漂っている。とくに焼き場のある入り口近くの席はひどいので避けるべき。鰻は大ぶりながら皮はそれほどカリッとしていない。タレはやや甘めで悪くないが、出汁は薄めなので茶漬けにはイマイチ。山椒はなぜかテーブルにはなく、店員に言ってもらわなければならない。昼には開店前から行列が出来、それは閉店まで絶えることがない。開店直後でない限り、着席してから出てくるまで40~50分くらいはかかってしまうので、昼に行く時には開店前の11時20分に並ぶのがベスト。また、売り切れ次第終了となってしまうので、夜の時間帯も早めに行くのがお勧め。

中村区名駅南1-3-16   
電話:052-582-3811 
定休日:月曜 
営業時間:11時半~13時半、17時~20時半(売り切れ次第終了) 
予算:うなぎまぶし2400円 
アクセス:市営地下鉄・東山線、鶴舞線「伏見駅」7番出口を出て、広小路通に沿って進む。「ヒルトンホテル」を過ぎ、納屋橋を渡って「宮鍵」を過ぎるとすぐ左側。伏見駅から徒歩8分 
最寄りのランドマーク:納屋橋 
お勧めポイント:ボリューム満点の美味しいひつまぶし

閉店 第8位 うなぎ 桜庵(おうあん)

 夜になるとかなり寂しくなるこのエリアには、「居酒屋 ラブリー」、「中華そば 中村屋」、「ベトナム料理 アンナブルー栄店」、「ラシエット・ドゥ・シバタ」などの有名店が目白押し。ちなみに、この店も多治見市から移転してきた有名店である。外観や内装は、鰻屋らしからぬ和風でポップな雰囲気。鰻はカリッと焼かれていてとても美味しい。タレも甘くも辛くもなく丁度良い感じだ。“ひつまぶし”は1種類のみで、通常の鰻丼と同様に美味しい。しかし、“ひつまぶし”に添えられる出し汁が甘く、茶漬けにするとイマイチな感じになってしまう。特に、“ひつまぶし”に固執しなければ、「上鰻丼」の方が満足度が高いと思う。

東区東桜1-2-29   
電話:052-265-7455
定休日:無休 
営業時間:11時半~14時、17時~20時 
予算:ひつまぶし2750円、上鰻丼2300円 
アクセス:①市営地下鉄・東山線、名城線「栄駅」4番出口を出て「オアシス21」の前を直進し、信号を渡る。次の交差点(Balossa)を右折し、「中華そば 中村屋」、「ベトナム料理 アンナブルー栄店」の並び。栄駅から徒歩4分。②市営地下鉄・桜通線「久屋大通駅」3Bを出て直進し、次の交差点(Balossa)を左折し、「中華そば 中村屋」、「ベトナム料理 アンナブルー栄店」の並び。久屋大通駅から徒歩3分。 
最寄りのランドマーク:Balossa、オアシス21 
お勧めポイント:カリッとした鰻に絶妙なタレがベストマッチ

(同点)第8位 鰻(うなぎ) 木屋

 江戸時代から続く鰻の老舗店。鰻は身に厚みはないものの、皮目がカリッと、身はふっくらと焼かれていて、全く泥臭さを感じさせない良質な鰻である。タレは辛くて濃いが、“ひつまぶし”との相性は良い。“ひつまぶし”に限って言えば、“名古屋ひつまぶし”トップ3の一角を狙えるだけの実力がある。夜は予約のみで2名様から。電話での素っ気ない対応と来店時の温かい対応のギャップには、多少戸惑うかもしれない。さらに言わせてもらうなら、禁煙にしてもらえればもなお良いのだが。

東区東外堀町11   
電話:052-951-8781
定休日:日曜・祝日 
営業時間:11時~13時半、17時半~18時半(夜は予約のみで2名から) 
予算:ひつまぶし2650円 
アクセス:市営地下鉄・名城線「市役所駅」2番出口を出て、市役所に沿って進む。「愛知県東大手庁舎」を過ぎ、城壁を過ぎた角を右折。100mほど進むと「毎日交通」が見えるのでその隣り。市役所駅から徒歩7分。 
最寄りのランドマーク:名古屋市市政資料館、名古屋市役所 
お勧めポイント:辛口タレで味わうひつまぶし