渓流釣りと北大眼科知床セミナー(2009年)

陳 進輝

 全国的に見て、眼科における諸先輩の最もメジャーな趣味はゴルフ。しかし、ここ20年くらいをみると、入局者でゴルフをする者が非常に少なくなった。仕事がとても忙しくなったことや女性医師が増えたこと、趣味の裾野が広がってゴルフに集中しなくなったためだと思われる。

 小学校の時分から父親から手ほどきを受け、小学校から高校までビッシリ渓流釣りにのめり込んだ僕は、大学の頃こそ硬式野球をやっていてできなかったが、入局後再び竿を手にした。先輩では、大野、長田、粂田、有門、小竹、大橋先生を、後輩では、三田村、南場、加藤、原田、新明、新田、大原、仲、木下、山本哲平先生などを渓流釣りに誘った。中でも、17〜18年くらい前から粂田先生と小竹先生とで始めた知床の渓流釣りキャンプが今でも思い出深い。それはヒグマがウジャウジャいる知床の忠類川最上流部で釣りをしながらキャンプをするというもの。世俗から離れ、無心に焚き火をしながら眺める満天の星空に、うっすらと架かる天の川がとても美しかった。

 始めて3〜4年が過ぎた頃、当時横浜市立大で教授をしていた大野先生が初参加した。その後、大野先生が北大眼科の教授として赴任してきた時には一同皆びっくり。大野先生が就任後、このキャンプの楽しさを全国の眼科医に知らせたいという趣旨で、「北大眼科知床セミナー」なるオフィシャルな名称をつけ、僕が事務局長として毎年開催することになった。

 この頃には札幌の有名イタリアン「SABOT」の小池シェフも参加して、キャンプとは思えないようなプロの豪華料理が野外の食卓に並んだ。徐々に参加者が増えて野外キャンプできる人数を超えるようになると、摩周湖近くの養老牛温泉「湯宿だいいち」にベースキャンプを移した。この頃の参加者には、樋田(当時:杏林大教授)、小椋(名古屋市立大教授)、大宮司(当時:北大医療短大教授)、小野江(当時:北大免研教授)、黒田(永田眼科院長)、江口(江口眼科病院院長)、出田(出田眼科病院院長)、越山(越山眼科院長)、中泉(研医会眼科診療所所長)、四釜(町立中標津病院麻酔科)先生など同門以外のゲストも多数参加した。特に、知床半島の先端で釣ったカラフトマスや忠類川で釣ったオショロコマを、自慢げに僕に見せてくれた亡き樋田先生の少年のような笑顔が思い浮かぶ。その後、北大で主催した2005年の臨床眼科学会の年に学会開催時期とシーズンが重なってしまったため、この年から現在まで何となくセミナーは開かれなくなってしまった。

 今年の夏、新たに赴任した石田教授にも早速渓流釣りを体験して頂いた。翌日、ブユ(ブヨ)に刺されて教授の手がグローブのように腫れ上がってしまったが、釣果はまずまず。来年もまた釣りに行きたいという。後日、慶応大の有志から就任記念に渓流竿も贈呈された。もしかすると、2010年は6年ぶりに北大眼科知床セミナーが復活するかもしれない。