外来医長挨拶

 

 2023年4月より外来医長に就任しました董 宇と 申します。よろしくお願いいたします。私は外来医長 として、医師・外来スタッフの負担軽減を進めていきたいと思っています。

 まず外来の現状を簡単に説明します。2020年4月から当時の外来医長の新明先生の大改革のおかげで、多くの専門外来は午前診療が可能となり、どこの専門外来にも該当しない患者はいわゆる一般再来で診療しています。

 数年を経て、現在の体制の問題点が徐々に出てきました。一般再来は専門外来の医師も診察することになっていますが、実際はほとんどコーディネーターの先生が診察しています(コーディネーターについては2022年のアニュアルレポートをご参照ください)。4月にコーディネーターの先生から、一般再来の患者数は曜日によりかなり差が大きいと指摘されました。確認すると確かにある曜日の一般再来は数人なのに、別の曜日の一般再来は30、40人もあるなど、労働格差が非常に大きいことが判明しました。対策として、一般再来の予約枠を1日20人にまで減らし、あふれた患者をほかの曜日に振り分けることで、曜日ごとの一般再来患者数を均等化するようにしました。現場の医師が声をあげてくれたおかげで問題点を見つけ出すことができ、意見してくれた先生に感謝しています。ただ、曜日ごとの患者数を均等化できても総数が変わるわけではなく、外来は相変わらず混雑しており、予約も枠超えが常態化しています。さらに10月からコーディネーターは二人体制から一人体制になり、外来が爆発しないか懸念しています。1、 2か月ほど様子を見て、またコーディネーターの先生から意見を聞こうと思っています。他にも、入院新患の予約時間などの問題点がありますが、医員の皆様の声を反映し、一つずつ変えていこうと思っています。

 一方、大学病院は診療、研究、教育が3本柱と言われ、医師は診療だけを求められているわけではありませ ん。しかし、勤務時間内に上記のことを全部終わらせることがほぼ不可能です。昨今の働き方改革では、勤務時間外に学会発表の準備、研究や指導に費やす時間はすべて自己研鑽とみなされます。求められているにもかかわらずです。勤務時間内に終わらないからと言って研究(基礎研究も臨床研究も)をおろそかにすることができません。大学病院の役目であり、大学病院でしかできないからです。

 外来の混雑が解消・改善されない、勤務時間内に研究に十分な時間を確保できないなどの問題の根底には、患者、それも症状が安定して大学病院でなくてもいい患者が多すぎることがあります。この積年の問題を解決するためには、必要な医療を必要な患者に提供しつつ、外来患者数を抑制・削減する以外は方法がありません(アイディアを常時募集していますので、妙案がある先生はぜひ私にご連絡ください)。

 患者数を抑制・削減するためには、まず症状が安定した患者の逆紹介を進める必要があります。石田教授のご理解とご許可を頂き、期限付きではありますが、逆紹介にご協力頂いた先生に医局費からインセンティブを付与することとしました(本来は北大病院が出すべきです)。逆紹介した患者のIDを各医師が毎月申告し、人数に応じてインセンティブを付与する方法です。面白いことに、集計すると、逆紹介を積極的にする医師もいれば、ほとんどしない医師もいることが判明し(当該医師を責めるつもりはまったくありませんが、改善してほしいものです)、また専門外来によっても非常に差が大きいことも判明しました。各外来の特性があるのでしょ うが、今後の課題です。お忙しい中、患者への説明、紹介状作製など逆紹介にご協力いただいた先生方、患者を受け入れてくださった関連病院の先生方、同門の先生方に大変感謝致しております。なお、私はただ楽したいから逆紹介を進めているわけでは決してありません。外来の専門性を高め、限られた医療資源(大学病院)を大学病院でしか対応できない患者に集中したい、増え続ける臨床試験・臨床治験(他科の試験・治験で眼科がかかわるものだけでも40以上!さらに眼科単独の試験・治験も複数)に振り向けたい、大学にいる先生が研究に集中できる時間を確保したいと考えているからです。

 私がここまで外来の患者数削減・医師の負担軽減にこだわるのは個人の経験にも関係があります。皆様、今までうけた1日の新患患者の最多記録は何人でしょうか。私は半日で16人です。入力ミスではありません。患者のためにと、来る患者を断らないと崇高な理想を掲げるのは素晴らしいことですが、働く者としては限界があります。昨今の働き方改革で医師の健康管理が一層重要視されるようになり、外来で勤務する医師・検査スタッフが過重労働にならないようにするためにも(すでに一部の専門外来や再来が過重労働になっています)、研究や自己研鑽の時間をしっかり確保するためにも、外来患者数を削減することが必要不可欠です。理想は医師の外来負担を減らし、しっかり自己研鑽や研究の時間を確保して、そこで研究成果を出して国内外に発信していけたらと思います。

 以上、自分の考え(の一部)を申し上げました。実現できるかどうかは予見できませんが、何もしなければ実現しないことだけは確実です。大学病院の皆様、関連病院の皆様および同門の先生方、ご理解・ご協力のほどよろしくお願い申し上げます。

 

下部の数字は逆紹介した患者数。鈴木先生が不動の1位を維持しています!

4か月で合計702名の逆紹介を実現しています。ところが、同時期の眼科の新患数は合計855名です!また、図の通り専門グループによって逆紹介数にかなりの差があります。私の感覚 としては網膜・黄斑外来は以前に比べ、混雑が緩和してきていますが、眼科全体として、これだけ逆紹介を精力的に進めても、目立った効果が出ていない現状があります。

 むろん、逆紹介した患者数の集計に漏れがある可能性もあります。また、各専門外来の事情が異なるので、無理に逆紹介を進めるわけにもいきません。周りの医療機関が診療規模を縮小する中で、どうやって患者数の増加に歯止めをかけつつ、医療のニーズに応えていくかは、今後の検討課題です(北大眼科単独で解決できる問題ではありません。。。ほかの大学病院・総合病院にも分担してほしいものです)。