網膜細胞生物学(血管) Retinal Cell Biology (Vascular Research)

グループチーフ:野田 航介

網膜細胞生物学(血管)グループでは、主として眼内における病理的血管新生をその原因とする疾患、例えば糖尿病網膜症や加齢黄斑変性の病態メカニズムや創薬に関する研究をおこなっています。昨年おこなった論文報告についてご紹介します。

 

糖尿病網膜症に関する研究では、村田美幸特任助教の実験指導の下でWu Di先生が興味深い結果を論文にまとめてくれました。一昨年、毒性の高いアルデヒド「アクロレイン」は網膜グリア細胞の炎症性ケモカインCXCL1産生を誘導し、その細胞遊走を促進することを村田助教が報告しましたが [Murata M, et al. Invest Ophthalmol Vis Sci. 2019]、今回その続報として網膜グリア細胞は自身の有するスペルミンオキシダーゼ(SMOX)によってアクロレインを産生すること、そして糖尿病網膜症の重要な病態基盤である低酸素が同酵素の発現調節を行なっていること、をWu Di先生は示してくれました[Wu D, et al. Invest Ophthalmol Vis Sci. 2020]。これら一連の研究は、網膜症進行において重要な役割を演じる網膜グリア細胞遊走の機序を一部解明したものであり、今後のさらなる発展が楽しみです。

 

また、昨年は糖尿病眼合併症に関する論文として、受容体結合プロレニン系(RAPS)が血管新生緑内障の形成に関わることを示した研究[Ishizuka ET, et al. J Clin Med. 2020] やSDT fattyラット(日本クレア株式会社)の糖尿病眼合併症動物モデルとしての有用性を示した研究[Kikuchi K, et al. J Diabetes Res. 2020] なども報告しました。さらに、滲出型加齢黄斑変性に関する研究では、Liu Ye先生が網膜下線維組織形成をPDGF阻害によって抑制できることをノバルティスファーマ社との共同研究の成果として示してくれました[Liu Ye, et al. J Clin Med. 2020]。Liu Ye先生と先にご紹介したWu Di先生は中国から夫妻で研究室に来てくれていた留学生で、お二人とも熱心に本グループの研究を進めてくれました。昨年めでたく2人とも学位取得・帰国を果たしましたので、今頃はCOVID19に負けずに自国でまた活躍してくれているものと思います。近い将来、彼らと一緒にまた仕事できることをグループ一同大変楽しみに致しております。

 

一起加油!劉先生、吴先生!!!

A) Liu Ye先生が示したPDGF阻害の網膜下線維組織形成に対する抑制効果

B) Wu Di先生が示した網膜グリア細胞におけるSMOXの局在

C)笑顔の素敵なLiu Ye先生(右)とWu Di先生(左)。どうも有難う!