外来医長挨拶

 2023年4月より外来医長に就任しました董 宇と申します。以前のアニュレポで当時の外来医長、新明先生が国内各大学病院の眼科外来患者数を示し、他大学の附属病院に比較して、北大病院眼科の外来患者数が多すぎることを明らかにしています。診療スタッフの数が増えないのに、外来患者数は増加傾向をたどっており、診療スタッフの疲弊を招いている現状があります。 そこで外来患者数を削減し、外来診療スタッフの過重労働を改善するため、2024年は以下のことを実行しました。

 

1.2023年に続き、北大眼科単独で開始した逆紹介に対する医局員へのインセンティブを継続しました。また、逆紹介を進めるにあたって、医師個人の負担(渋る患者を説得しなければならない、理不尽な投書をされるなど)軽減やトラブル防止のため、北大眼科の方針として、外来掲示物で逆紹介の基準を明記しました。

従来の掲示物は文言があいまいで(優しすぎる?)北大眼科の過重労働の深刻さが伝わらず、逆紹介を進める上ではあまり役に立ちませんでした。幸い掲示物の内容を変更してからは、自ら逆紹介を希望する患者も現れ、現場の医師からも逆紹介を進めやすくなったと聞いています。  忙しい外来の中でも根気よく逆紹介を進めてくれた医局員の先生方の努力のおかげで、北大眼科の外来患者数は2023年に増加傾向に歯止めがかかり、2024年に入ってからは、ついに減少に転じました!紹介患者数は相変わらず増加傾向なので、外来患者数の減少は純粋に逆紹介の成果です。

診療レベルを落とすことなく、外来患者数を削減するのは、大変難しいことであり、逆紹介を精力的に進めてくれた医局員、患者を受け入れてくださった関連病院および同門の先生方に感謝申し上げます。図1は年度別の紹介患者数と逆紹介患者数の推移で、図2は年度別の曜日ごとの外来患者数の推移です。ほぼすべての曜日で2023年から外来患者数が減少しています。なお、2024年度のデータは2024年4月から10月までの数値ですまた、グループ別では、2023年に続き網膜硝子体外来は引き続き最多の逆紹介数を誇っています。これはもともと網膜疾患の患者数が多いことや、手稲よこい眼科や札幌そうせいイーストクリニックなど、眼底疾患専門の同門の先生方がいらっしゃることが大きく関係しています。特に野田 航介先生がいらっしゃる札幌そうせいイーストクリニックには、滲出型加齢黄斑変性に対する抗VEGF薬硝子体内投与や、造影剤を使用せず非常に鮮明な網膜血管画像を撮影できるキヤノンのOCTA撮影の依頼など、沢山の患者さんがお世話になっており、大変感謝しております。

さらに、2024年は緑内障外来からの逆紹介が著明に増加しており、菊地 香澄先生が逆紹介数でトップ3にランクインしています。関連病院や同門の先生方のご協力のおかげで、少しずつ緑内障外来患者数が減少してきていますが、常勤医師3人と午前勤務の客員医師2人だけで担当しているため、昼休憩も取れず午後3時まで外来がかかるのが常態化して、過重労働が深刻です。診療スタ ッフの健康を守るためにも、緊急手術に余裕をもって対応できるようにするためにも、今後はさらに逆紹介を進めていく必要があります。

なお、逆紹介患者数ランキングでは、2024年も鈴木 佳代先生が不動の1位を維持しています。トップ3の先生方はいずれも4月から10月までの間だけで100名以上逆紹介をしています。鈴木 佳代先生、千葉 麻夕子先生、菊地 香澄先生、ありがとうございます!

 

2.従来二人体制の外来コーディネーターを一人体制に変更しています。

逆紹介の効果で一般再来の患者数増加も抑制されたため、相変わらず忙しいのですが、一人体制でも一般外来を回すことができるよ うになっています。コーディネーターを担当しない日は手術や学会準備などに時間を割けるようになりました。

 

3.北大眼科終診後の再紹介の基準を変更しました。

従来は終診後2年以内は、再来扱いで患者が自ら電話で予約を取ることが可能でした。ところが、民間病院では長くても1年を超えると新患扱いとなります。なぜ北大は2年でしょうか。事務にも他科の先生にも尋ねましたが、だれも理由を知りません。

 

 北大眼科は通常の外来診療以外に、治験や臨床試験も積極的に受け入れています。この原稿を書いている時点で、北大眼科は単独や他科との共同で合計50件以上(!)の治験や臨床研究を行っています。治験や臨床試験は指定された検査機器を用いることが多く、検査自体も時間を要するものが多いです。また検査前の機器の設置、検査後の片付け、さらに機器の管理も眼科がしなければなりません。北大眼科がこれだけの治験や臨床試験に参加できているのは、忙しい外来で通常の検査をこなしながら、最大限に協力してくれている、廣岡主任をはじめとしたCOの皆さんのおかげです。心から感謝致します。

 外来医長になって1年半経過していますが、各方面に迷惑をかけながらもなんとかやってこられたのは、同門の先生方や医局員の先生方のご協力のおかげだと思っております。今後ともご指導・ご鞭撻の程どうぞよろしくお願い申し上げます。

 

図1. 年度別の紹介患者数と逆紹介患者数の推移

図2.  年度別の曜日ごとの外来患者数の推移。斜視小児外来がある火曜日はなかなか減りません。木曜日は途中医師数が増えたため患者数はそれほど減っていません。