木嶋 理紀
今回、トレーニングプログラム修了の原稿の依 頼をいただいて、プログラム開始時の自分の原稿 を見直して、月並みな言葉ですが、「3年経ったの だな」としみじみ感じました。 2015年4月から正式に緑内障トレーニングプ ログラムに入り、陳先生、新明先生、大口先生の ご指導のもと、trabeculectomy を色々経験させ ていただき、現在は白内障とのトリプル手術、さ らに眼外法ですが suture trabeculotomy も経験 させていただきました。 北大の緑内障患者数が増え続ける中、緊急手 術、入院も含め、がむしゃらに頑張ってきた、と いう感じで、決して「あっという間でした」とは 思えません。 日々悩み考えさせられることがたくさんあり、 そのたびにご指導の緑内障の先生方はじめ他のグ ループの先生方にもたくさん相談させていただき ながら、なんとか乗り切ってきた、という感じで、 毎日新しい発見があります。術者になってから、 指導の先生方の手術に入ると、助手の仕事のみに 集中していた若い頃とはまた違って、術者の視点 で考えるようになり、これも学ぶことが大変多い です。 緑内障の手術は、決して見えやすくなるわけで はないので、患者さんが喜んでくれないのでやり たくない、という声を聞きますが、術後経過がよ くて何年も落ち着いている患者さんに出張先の病 院でお会いすると、やはり受けてよかったとおっ しゃる方が多いですし、臨床研究で何年も追跡していて、経過がよい方のカルテをみると、本当に 手術が行われてよかったと感じます。また逆に経 過があまりよくなくて、何度も手術をしなければ ならない患者さんとは、病気と闘う同士として強 い一体感を感じることも多いです。大変やりがい のある分野ですので、これからトレーニングプロ グラムに入る先生方、是非一緒に緑内障をしまし ょう。 トレーニングプログラムの3年はもうすぐ終了 ですが、緑内障術者としてはまだまだこれから、 というところですので、今後も精進を重ねていき たいと思います。今後ともどうかご指導の程よろ しくお願いします。 また研究の方ですが、年度末~来年初めに発表 を行い、まとめていく予定です。こちらも併せて ご指導の程よろしくお願いします。 |
指導医から一言:「縁がとりもつ臨床指導医育成プログラム」陳 進輝 入局した頃から木嶋先生を知ってはいましたが、他の若手の先生と同様に、特に親しいと言うほどの接点 はありませんでした。初めて縁を感じたのは、当時、佐藤 出先生がいたNTT東日本札幌病院に、木嶋先生 が下として赴任したことでした。実は、佐藤先生は緑内障グループ発足時からのメンバーであり、当時の NTT 東日本札幌病院で緑内障手術を多数手がけておりました。その頃の木嶋先生はと言えば、佐藤先生の 言葉を借りれば、「とても仕事熱心で、緑内障にも興味を持っているみたいだ」ということでした。この話 を佐藤先生から何度か聞かされておりましたが、結局本人にこの事を直接確認することなく時は過ぎて行 きました。それでも、何となく大学に戻って緑内障グループに入ってくれるのかな?と思っておりました が、大学に戻ることなく富良野協会病院へ転勤してしまったため、あきらめていました。 当時の富良野協会病院の眼科は一人医長であったため、木嶋先生をサポートするために、僕を含めていろ いろな先生が出張に行っておりました。そのメンバーの一人がたまたま僕であり、行ったときに木嶋先生 の手術助手などをして互いに話をするうちに、2度目の縁が生まれました。僕から見て、木嶋先生の手術は 慎重でありながらとても上手で、これなら一人医長としても心配ないし、ぜひ緑内障手術もやってほしいな あと思っていました。しかし、何かの折にさりげなく本人に聞いてみたところ、ご主人や子供たちも富良野 をとても気に入っており、このまましばらく富良野にいたいとのことでしたので、やはりダメなのかなと思 っていました。しかし、転機は突然訪れます。年度途中で突如医局の医員に欠員が出てしまい、出張病院に 派遣している誰かを戻さなければ、マンパワーに支障を来す事態となったのです。そこで、白羽の矢が立っ たのが、たまたま一人医長の病院にいて、力をつけてきた木嶋先生でした。医局の苦しい事情を話し、当時 は渋々だったと思いますが、大学に戻ることに何とか同意してもらえました。 大学に戻った翌年から彼女の「緑内障の臨床指導医育成プログラム」がスタートしました。まずは、緑内 障の外来診療と術後管理の方法からスタートし、手術スキルとして、トラベクレクトミー、トラベクレクト ミー白内障手術のトリプル、トラベクロトミー、スーチャートラベクロトミーへとステップアップしていき ました。また、様々な症例発表や緑内障手術に関する研究などに加え、前向きの臨床研究なども行って素晴 らしい成果を上げてくれました。 前に少しだけ触れましたが、彼女は二児の子供を持つ女性医師です。ご主人のサポートを受けながらも このプログラムで成長できたということを、身をもって示してくれたことは、後に続く若い女性医師にとっ ての良きお手本となることでしょう。また、臨床指導医育成プログラムで学んだ「バトン」を、これから是 非後輩の医師たちに「繋いで」いってほしいというのが僕の願いです。期待していますので、今後も頑張っ てください! |