留学報告(米国セントルイス・ワシントン大学)
山本 拓
2023年4月から、アメリカ中西部 ミズーリ州セントルイスにある、ワシントン大学セントルイス(略称:WashU)に留学しております。セントルイスはあまり馴染みのない都市だと思いますが、20世紀初頭に万博およびアメリカ大陸初のオリンピックが同時開催されるなど、一時期はアメリカ屈指の都市でした。また直近では、ワールド・ベ ースボール・クラシック2023で日本代表として活躍したラーズ・ヌートバー選手の所属するカージナルスの本拠地として、僅かに知名度が向上したと思われます。
研究に関して、董先生、長谷先生の諸兄に続き、Rajendra Apte教授が主宰されている研究室に所属し、日々基礎研究を行っています。 Apte Labは加齢黄斑変性を主な研究対象として、網膜疾患における炎症、特にマクロファージに着目したアプローチを続けて来ました。近年ではより根源的なテーマとして加齢・老化そのものに着目した研究に力を入れており、シングルセルRNA-seqを含む様々な技術を駆使しながら、質の高いアウトプットを行なっています。私自身はと言いますと、大学院時代は主に網膜疾患を扱っていましたが、ちょうど入れ替わりとなった長谷先生のプロジェクトを引き継いだため、ぶどう膜炎モデルを用いた免疫老化がメインテーマになっています。自分にとっては新しいテーマですが、その分新しい知識・技術を学ぶ機会が多く、免疫と老化という重要かつトレンドでもある研究にワクワクしながら取り組めています。 Apte LabとWashUに関して、ボスであるApte先生は温厚ながら頭脳明晰な人格者であり、ラボメンバー・OBを含め皆に慕われるメンターです。現在ラボはポスドク4人、大学院生3人、スタッフ・アシスタント4人を基本メンバーとしていますが、
Apte先生の人気も相俟 って絶えずローテーションの学生などが回って来るため、最近ではデスク不足になりかけています。ちなみにApte先生は非常に日本好きでもあり、自宅の庭を改修し日本庭園にするほどです(大きな池に鯉が泳いでいました)。また、WashUは日本での知名度は低いと思いますが、ノーベル賞受賞者を多数輩出している全米指折りの名門校であり、各種有名ジャーナルの投稿元機関の上位に名を連ねています。個人的に1番印象的なのは、動物実験室に行く途中にあるWashU医学部図書館は「Bernard Becker Library」と名付けられていますが、実は名前の由来が緑内障の大家である眼科医であり、皆様お馴染みのダイアモ ックスを緑内障治療薬として見出した人物だったことです。渡米前は地球の裏側の馴染みのない大学だと思っていましたが、そこでの研究成果がこんなに身近だったことに気づき、一気に親近感が沸いたと共に、重要な発見は時間や場所を超えることを改めて認識しました。
あっという間に半年が過ぎ、アメリカでの生活にかなり慣れた一方で、言語面を含めあまり進歩していない部分も感じています。少しでも得られるものが多くなるよう、試行錯誤を続けて参ります。
最後になりますが、このような貴重な留学の機会を与えてくださった石田教授を始め、サポートいただいている医局員の皆様方に心から御礼を申し上げます。ありがとうございます。
↑ FUJIRETINAでのApte先生とのツーショット。そのまま渡米しました。
↑ WashU医学部のサイン。後方がBecker Library。