新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する診療

私は眼科医ですが、COVID-19患者の診療に関わる機会がありました。

一つには私は2020年秋にCOVID-19の療養中にまぶたが腫れて、約半年間治癒しないという30歳代女性の診察をする機会を得ました。種々の病理学的検討を行い、本症例をCOVID-19関連慢性両側性涙腺炎と診断しました(Kase S, et al. JAMA Ophthalmol 2022)。

これまで原因不明であった涙腺炎にCOVID-19関連の涙腺炎がある、その涙腺炎がCOVID-19の眼科的後遺症になり得る、ことが初めて学術的に認められました。本研究の概要は、北海道大学病院のプレスリリースにも掲載されました(https://www.huhp.hokudai.ac.jp/wp-content/uploads/2022/03/release_20220301.pdf)。

もう一つの機会は、2022年3月28日から4月3日まで、北海道大学病院のコロナ病棟へ出向し勤務させていただきました。当時は依然デルタ株が主流であったと考えられ、呼吸器内科医とともにCOVID-19患者の日々の診察に加え、肺炎の状況によってソトロビマブあるいはレムデシビルとバリシチニブの投与を中心に行い、中等症や重症の患者が回復する経過を診てきました。

涙腺の病理組織学的所見です。

上段は新型コロナ関連の涙腺炎で、リンパ形質細胞浸潤に加え、線維化と涙腺の導管内に著明な好酸性物質の沈着がみられます。

下段のコロナPCR陰性の特発性涙腺炎では、リンパ球浸潤がみられますが、導管の障害はありません。