外来が、終わらない・5年ルール

外来が、終わらない

今年度は、視能訓練士さんに産休や寿退社が多く、人員不足気味の外来でしたが、年度途中で、伝説の(?)視能訓練士の阿部さんが復帰してくれました。病院からは相変わらず、収入を増やすよう要求されていますが、幸いペースは鈍ってもまだ右肩あがりの状態を保っています。昔、勤めていた民間病院では、やり手の事務長がよくこういっていました。「先生、お金を稼ぐことと、良い医療をすること
は矛盾しません。むしろお金を稼がずに良い医療が続けられるわけがないでしょう。」本当にその通りだと思います。
そんな中で、最近問題となっているのは、外来の終了時間です。我々が頑張って外来診療をしていても、病院は17時45分になると外来棟の通路やホールの電気を消すのですが、実際その時間になっても外来患者の診察が続いていることは、時々あります。
すると何が起きるかというと、眼の不自由な患者さんが、暗い外来棟の中で、すでに停止したエスカレーターを階段として降りていくのですが、会計窓口はすでに閉鎖、さらには玄関もすでにロックされています。そこで唯一開いている救急玄関の光の方向を求めて患者さんはさまよい歩きます。看護師が出口まで付き添うにしても、時間外には1名しか看護師がいないので他の患者さんが残っている状況では無理です。このさまよえる眼科患者は師長会議などで「病院の怪談?」として評判になっているらしいのですが、あんまり笑えません。
外来看護師の場合は、非正規雇用のパートタイム勤務なので、なかなか人数を増やすこともできず、しかも残業が続くと日中の勤務を休んで調整する必要もでてくるそうです。そもそも外来看護師は、子育てなどで夜勤ができなくなった看護師が勤務する場合が多いのですが、眼科勤務は、長時間に渡るため、転属を拒否する看護師も多いと伺っています。ここでも人材の確保が課題です。
医師にもスピーディーに仕事を終わらせるよう、個別に話をしていますが、なかなかみんな自分の診療のペースというものもあるようで難しいです。しかし、与えられた時間内で最大限のパフォーマンスをしてこそ、プロフェッショナルだと私は思います。

5年ルール

今年度は、外来で主役級の働きをしていたDr’s クラークの村川さんが、5年ルール(5年を超えて非常勤職員として雇えない)のため、退職を余儀なくされてしまいました。Dr’s クラークとは、従来の窓口業務を行っていた派遣会社からのクラークとは別に、病院で直接雇用している職種で、主にコンピューター入力や診断書の下書き、患者の予約変更など多岐にわたって、医師の事務仕事を軽減するために働いています。現在、眼科は3名の雇用を行っていますが、彼女たちの働きが無くては業務が回らないくらい、年々存在感が増しています。
Dr’s クラークの雇用は、2009年に前任の外来医長だった北市先生と、看護部に要望したのが始めで、それから3年かけてようやく実現した制度です。少しずつできる仕事内容を増やしていき、ようやく昨年くらいから当時思い描いていたイメージと一致するようになりました。
しかし5年ルールが適用されてしまうと、一番仕事を覚えたところで、退職を余儀なくされます。そこで人が入れ替わっても変わらず業務が進行するよう、こちらにもいっそうの工夫が必要となります。 視能訓練士にも、この5年ルールは適用されるところだったようですが、こちらは石田教授の病院への働きかけで、どうにか阻止することができました。さらに長期に働いてもらえるよう視能訓練士の正職員化についても推進していきたいです。また、今後はDr’sクラークも5年を超えて働けることが、最近決まったそうです
しかし、来年度はその5年ルールが非正規雇用の医師にも適用され、こちらはまだ撤廃するという情報がありません。専門外来などで活躍する中堅どころの医員まで一斉に退職させなければならなくなると、外来診療に混乱をきたすことは容易に想像できます。
しかし、そこであきらめるのではなく、たとえ制限のある環境であっても、少しでも皆が働きやすい環境を確保すべく頑張っていきたいと思います。職員が満足していない職場では、患者さんも満足するはずがないというのが私の考えです。

2018年1月記