ドライアイ外来

【責任医師】:田川 義晃

2019年7月からドライアイ外来を新設させて頂きました。ドライアイ外来というと、読者の先生方は、シェーグレン症候群やGVHDのような眼表面にびっしりとSPKがみられるような涙液減少型ドライアイの患者さん、あるいは、瞼球癒着や角化の激しい眼類天疱瘡やStevens-Johnson症候群などの重症ドライアイの患者さんを思い浮かべるかと思います。そのような一目で重症だとわかる患者さんももちろん多数いらっしゃるのですが、私のドライアイ外来ではその真逆、つまり細隙灯顕微鏡所見では正常な眼表面を呈しているにも関わらず、非常に訴えの強い患者さんが多いのが特徴ではないかと思います。そのような患者さんは、日本国内では現在、 BUT短縮型ドライアイと呼称されることが多いのですが、「眼を掴まれて握りつぶされる」あるいは「眼球を後ろから引っ張られる」など眼表面の涙液層の不安定性のみからは、その自覚症状が説明困難な方も少なくないのが現状です。

 

今挙げたような症状の強い患者さんで、他覚所見と自覚症状が大きく乖離する原因として、近年、角膜知覚神経の過敏性が急速に注目を集めています。ドライアイにおいては角膜知覚神経が障害されると言われていますが、それ以外にも、眼科手術や眼部帯状疱疹など様々な原因で知覚神経が障害されます。そして、一旦知覚神経が障害されると、その一部の方において神経障害性疼痛、さらには痛みの慢性化へと発展していきます。白内障術後に手技には何も問題が無かったはずなのに1年以上も眼が痛い、ゴロゴロする、まぶしいです、と言っている方、あるいは、他院でLASIKをうけてから数年経過してもドライアイ症状が強い方、そのような既往や他覚所見も無いのに、なぜか毎日眼が痛いですと言って足繁く来院されて来る方、先生方の外来にも一人くらいはいらっしゃるのではないでしょうか?

 

ドライアイ外来という名称が今までは無かったので、周囲の先生方からは「田川先生の不定愁訴外来で診て欲しいのですが何曜日に入れたらよいでしょう?」と言われ、不定愁訴外来という名称がなかば定着していました。現在はドライアイ外来の名称を頂きましたが、ドライアイや眼痛の方以外にも、原因不明の眼精疲労、羞明、よくわからない眼の訴えの方も診察させて頂いています。一括りにするのは少々乱暴かもしれませんが、これらの方に共通するのは眼に関わる何らかの知覚異常を有することではないかと考えます。患者さんご本人としては非常に強い症状が存在しているにも関わらず、神経の知覚過敏は目には見ることができませんので結局のところ、眼科医からは不定愁訴に映ります。よくわからない訴えをされていてお困りの患者さんがいらっしゃいましたらぜひ一度ご紹介頂けますと幸いです。過去には、眼痛を主訴にして、眼窩先端部症候群、海綿静脈洞真菌症、下垂体腫瘍、多発性硬化症などいわゆるred flagの上がる疾患が発見されたこともありますので、できうる限り見落としが無いように慎重に対応することを日々心がけております。

 

ドライアイをはじめとして、眼痛、羞明、眼精疲労、その他よくわからない訴えをする方がいらっしゃいましたら、躊躇せずにご紹介、あるいはご相談だけでも頂けますと幸いです。何卒よろしくお願い申し上げます。

 

BUT短縮型
ドライアイ開瞼直後に既に涙液層が円形に破綻しているspotbreaktypeのドライアイ。
涙液層の不安定性が存在している。
涙液減少型ドライアイ
涙液量の低下がみられ、patchy patternの点状表層角膜症がみられるシェーグレン症候群に伴う涙液減少型ドライアイ。