北海道大学大学院医学研究科 眼科学分野
診療教授/人事主任 陳 進輝
皆さんは「ドボジョ」という言葉をご存じでしょうか?土木系の仕事や学問に携わっている女性のことらしく、最近ではテレビや雑誌など、多くのマスコミにも取り上げられているようです。このような「・・・女」や「・・・ガール」がつく言葉は、確かに最近よく耳にしますが、これはこれまで女性が敬遠しがちだった分野への社会進出を表す言葉であり、我々医師の世界もその例外ではありません。
調べてみますと、北大医学部入学者における女子の割合も年々増加してきており、僕が入局した年の1年生の女子の割合は8%、眼科医局は23%であったのに対し、本年度の女子学生は26%、眼科女子医局員は39%といずれも急増しており、女性医師のパワーが今後の医局の命運を握っていると言っても過言ではありません。
医局内での僕の役割の1つに“人事主任”がありますが、北大では、学生や研修医などに対するリクルート活動などは“医局長”である南場診療准教授が、医局員の人事に関することは僕が担当するという分業制をとっています。この他、人事と関わる関連病院との渉外や出張などに関することも僕が担当しています。石田教授をはじめ、僕や南場先生がいつも頭を悩ませているのは医局全体の人事が上手くいっているのか?そして、これからも上手く行きそうなのか?ということです。
適材適所に人を配置ということはもちろんですが、それを実現するためにはマンパワーが必要です。マンパワーがなければ、個々への負担が増えて悪循環に陥ってしまいます。しかしながら、全国的に見ても2001年の464人をピークに眼科への入局者数は減少傾向をたどり、2013年度は205人にまで減少しました。我が北大といえども例外ではなく、7?8人が入局していた時代はもうやってこないのではという危惧さえあります。この状況に対し、各大 学の医局も手をこまねいているわけではなく、学生や初期研修医を眼科の学会に参加させたり、日本眼科学会が中心となって「眼科サマーキャンプ」を開催したり、それぞれが知恵を出し合って眼科に興味を持ってもらうよう努力をしています。
このような新入医局員を増やすということももちろん大事なことですが、もっと大事なことは医局員を減らさないということです。医局員の退局理由の多くを占めるのは「開業」ですが、それと並んで多いのが女性医師の「出産・子育て」による休局や退局です。眼科医として一人前になってこれからという時期なだけに、少しもったいないような気もします。彼女らから話を聞いてみますと、彼女たち自身は続けたいという意思がありながらできないという社会構造的な問題が存在します。
それを解決するためには、何よりも彼女たちが働ける環境を作ってあげることが大事です。例えば子供を預けられる環境、常勤医であれば子育て中は当直を免除するような制度、フレキシビリティーのある勤務体系、育児休暇、客員臨床医師への報酬など、職場内規定の変更まで踏み込まなければならない問題も山積しています。しかし、これからの医局の将来を考えると、少しずつでも良いので、前進させて行かなければならないと考えています。そのためにも、2013年度から病院長補佐となった石田教授と共に二人三脚で頑張って行きたいと思っています。
(2013年アニュアルレポートより)