埼玉県

鮨 猪股

 新進気鋭の寿司職人が営むマニア注目の寿司店。店舗はJR川口駅近くの住宅街にある古いマンションの1階である。店内に入ると、左側に清潔感漂う白木のカウンター席がある。僅か8席だけの小さな店であるが、恰幅の良い坊主頭の若い大将と女将さんの2人だけでやっているため、このくらいのキャパが丁度良いのかもしれない。システムは、完全予約制による同時スタートの2回転制。
 この店の素晴らしいところは、店主の素材に対する貪欲な姿勢である。それは、僕がこれまでに出会ったどの寿司職人よりも意欲的である。若さ故なのかもしれないが、とにかく、アンテナを張りめぐらして全国の優れた素材を見つけは、直で取り寄せているようだ。また、この店は酒を置いてはいるものの、酒のアテやつまみなどは一切なく、握り21貫と玉子焼きだけのおまかせコースのみとなっている。このように、刺身やつまみなどが一切出てこない握りだけの純粋な寿司店は、九州JR小倉駅近くにある某有名店ぐらいしか思い当たらない。
 握りだけのコースにも関わらず、店主の仕事は決して早くない上に、その場でネタを捌いたり、丁寧な仕込みをすることなどもあって、コース終了までに2時間20分を要した。しかし、空気を含んだ握りはフワッと口の中に広がり、赤酢を使った酢飯も美味しく、食べた後の感想としてはそれなりに満足度が高かった。それでも、正直、2つ星〜2つ星半くらいの評価であったが、今回は発展途上にある若さと店主の意欲に期待を込めての3つ星評価である。
 今回食べて残念だった点は、「春子」と「キス」に挟んで供される「おぼろ」である。酸味が強めで、リンゴのようなフルーティーな風味と赤酢の酢飯の相性が良くないのだ。加えて、江戸前の穴子が泥臭かったこと。それにしても、東京の有名寿司店や穴子専門店は、なぜ江戸前の穴子をありがたがって使うのかが理解に苦しむ。どんなに美味しく脂がのった良質な穴子でも、東京湾の泥臭さが移ってドブ臭ければ台無しである。僕のこれまでの経験では、江戸前の穴子が泥臭くなかったことは、10回に1回くらいである。(2018年6月追加)

川口市幸町1丁目12-23 サンリーブ幸町コートハウス  
電話番号:048-211-4175(完全予約制)
定休日:日曜・祝日
営業時間:14時〜と18時〜の同時スタート2部制
予算:2万〜2万5千円(仕入れるネタによって変動する)
アクセス:JR川口駅東口を出て、直結する歩道橋を直進する。「SOGO川口店」前の階段を下り、「SOGO川口店」を正面に見て手前に走る産業道路を左へ進む。「幸町小学校西」交差点の信号を右折する。道に沿って進み、タワーマンション「川口パークタワー」を過ぎたら左側にあるマンションの1階。JR川口駅から徒歩13分
最寄りのランドマーク:川口パークタワー
お勧めポイント:究極のネタを追い求める若き職人の店

古い白いマンションの1階です ココです!外観は昭和の風情で「どうかな?」いう感じだったが・・・ 店内は清潔感漂う白木のカウンター席が8つ スタートは、丁寧な隠し包丁が施された「白イカ」 大分名産の「城下カレイ」は最高レベルの美味しさ 「スズキ」は歯ごたえがいい 余市産の「ムラサキウニとバフンウニの小丼風」 左の白いのがムラサキウニで、右のオレンジ色がバフンウニ 肝醤油が塗られた「煮アワビ」 「サクラマス」だったかな? 「真鰹」に擦ったネギをのせて 「甘エビ」 鳥取の境港で水揚げされたという60㎏の「本マグロの赤身の漬け」 鹿児島・出水(いずみ)のブランド鰺である「幻の真鰺」は、小振りながら、ネットリ・サッパリとしていて脂ものった最高レベルの逸品 「煮ハマグリ」 「ナガスクジラの尾の身」は、擦りネギと相性ピッタリ。しかも、脂がのって最高! 「春子」はおぼろを挟んで供される 佐賀の「赤ウニ」 「バフンウニ」よりも濃厚だ! 江戸前の「焼き穴子」。ツメでなく塩味なので、かなり泥臭さを感じた。それにしても、東京の有名寿司店や穴子専門店で、なぜ江戸前の穴子をありがたがって使うのかが理解に苦しむ。どんなに美味しく脂がのった良質な穴子も、東京湾の泥臭さが移ってドブ臭ければ台無しである。僕のこれまでの経験では、江戸前の穴子が泥臭くなかったことは、10回に1回くらいにすぎない 鳥取の境港で水揚げされた「本マグロの中トロ」 鳥取の境港で水揚げされた「本マグロのカマトロ」 「キス」はおぼろを挟んで供される 「煮ダコ」 手巻きの「鉄火」 簾巻きの「かんぴょう」玉子焼きは海老が香ってなかなか良かった