おでん屋 蛸長(たこちょう)
1882年創業の京都で最も古いおでんの店。今年で創業133年を迎え、この店よりも古い店は1844年創業の大阪の「たこ梅」くらいであろう。「蛸」はおでん屋の隠語で、この店の初代・長次郎の「長」をとって名付けられたという。この店は古いだけでなく、日本最高レベルのおでんを食べさせてくれる。とにかく、洗練されたコクのある出汁が旨いのである。
店内に入るとL字型のカウンター席がある。カウンター内にはおでん鍋と共に、灘の「白鶴」とサッポロの「ヱビスビール」が置かれているが、実はこの店にはこの2つの酒しか置いていない。「白鶴」はこの店のおでんに合うよう造られた特注品とのことであるが、酒の種類の少なさが唯一残念な点である。
壁のお品書きは全て漢字で、当て字のものもあるため、店主の説明を聞きかなければ分からないものも多い。例えば「和蘭陀(オランダ)」とは魚の練り物の素揚げのことで、「冬四季茸」とは冬椎茸のこと。また、「巻甘藍」とはロールキャベツのことで、「和布」はワカメと読む。この日の大根は「京大根」、つまり聖護院大根であったが、夏季は通常の長大根になるという。中でも、「湯葉」と「蛸」、「海老芋」、「京大根」の4点は必ず食べてほしい逸品だ。「湯葉」はトロトロのおぼろ湯葉を生湯葉で包んでおり、その食感と湯葉の風味は絶品。瀬戸内の岡山県産タコを使用した「蛸」も食感が良く、濃厚な味がする。「海老芋」は線維を感じないくらい滑らかで、箸で持つと崩れてしまうほど柔らか。おでん汁を吸い込んだ「京大根」も最高にいい。全てのおでんには、黒七味をかけた九条ネギが添えられる。実は、この店には「裏種」という日替わりの裏メニューがあり、この日は「米沢牛」のおでんであった。また、おでんの締め「七五三締」は、蛸メシの焼きお握りを茶漬けにしたもの。
この店は予約ができないので、まず電話で混んでいるかどうかを確認し、近くまで行ったらもう一度電話で確認してから行こう。たとえ、早い時間に満員であっても比較的回転が良いので、時間を空けてもう一度電話をすれば入れることが多い。ちなみに、店内は禁煙である。(2015年1月追加)
東山区宮川筋1-237
電話番号:075-525-0170
定休日:水曜
営業時間:18時~22時(ネタがなくなるまで)
予算:1人5000〜6000円くらい
アクセス:阪急河原町駅の出入り口1を出て、四条通を鴨川・八坂神社方面に進む。鴨川を渡り、「京都四條南座」の信号を右折して川端通を進む。「焼肉の名門・天壇」を過ぎて進むと、交差点の左角にある。阪急河原町駅より徒歩7分
最寄りのランドマーク:京都四條南座、川端通
お勧めポイント:出汁が素晴らしい京おでん
カウンター席の奥には「白鶴」と「ヱビスビール」が置かれている
手前が店主、奥が番頭さん
これがお品書き
トロトロの「海老芋」
聖護院大根を使った「京大根」
豆腐
「鴨捏」鴨ツクネは骨や軟骨が入っていないので、風味や食感に欠ける
「葱鮪」は赤身のマグロを使っているのか硬め
和蘭陀
厚揚げのような「油揚」
蛸
厚みのある「湯葉」