熊本ラーメンと太平燕(たいぴんえん)
「熊本ラーメン」のルーツは久留米ラーメンなので、スープは博多ラーメンと同様、混濁したトンコツスープである。しかし、それに鶏ガラが加わり、博多ラーメンよりも臭みがなく、マイルドに仕上がっているのが特徴。
また、昭和30年に創業した「桂花」で調理を担当し、後に独立して「味千ラーメン」を創業した劉壇祥が、ラーメンにニンニクを入れることを思いついたとされている。このため、熊本ラーメンでは、ニンニクを揚げて作ったマー油やニンニクチップ、ニンニクパウダーが入れられている。もちろん、生ニンニクは使わず、博多ラーメンのような紅ショウガも入れない。また、麺は低加水のストレート細麺が一般的で、博多ラーメンのような低加水の極細麺よりもやや太めとなっている。しかし最近では、博多ラーメンの影響を強く受けたラーメン店が続々と開店し、鶏ガラを使わなかったり、博多ラーメンと同じ極細麺を使うなど、その境界線は薄れつつある。
「太平燕」とは、明治時代に華僑が伝えた福建省の郷土料理を、後に日本風にアレンジした麺料理である。本来の「太平燕」は、アヒルのゆで卵(圧乱と読み方が同音=太平と同意)とワンタンの皮みたいなパスタ(燕)を入れたスープ料理。燕の代わりに春雨を用い、アヒルの卵の代わりに鶏の揚げ卵を用い、熊本で独自の進化を遂げた。元祖は「中華園(熊本市の県民百貨店にあったが2015年に閉店)」とされるが、「会楽園」や「紅蘭亭」を発祥とする説もあり、詳細は不明である。