朝食 喜心(きしん)

 祇園の小さなホテルの1階にある完全予約制の朝食専門店。ホテルの1階にあるとは言っても、ホテルとは全く関係のない店である。実はこの店、「日本の朝食」という食の体験を提案する新しいコンセプトの料理店。つまり、食事を提供するだけという従来の店とは異なり、作っているところを見せたり、土鍋ご飯の変化を楽しませてくれたりといった、体験型の食事を提供してくれる店なのだ。現在は京都と鎌倉に2店舗あり、各店舗とも時間枠ごとの完全予約制となっているので、フラリと訪れても食べることはできない。
 店内に入ると、左側にカウンター席があり、右側にテーブル席が1つある。カウンター内では、若い女性料理人が調理を担当し、もう一人の若い女性がサービスを担当するという2名体制である。客の人数に合わせて土鍋ご飯を炊き上げるため、前述のように時間枠による完全予約制となっている。
 先ずは冷たい京番茶が出て、朝食のコース内容の説明をしてくれる。コースは、向付の「汲み上げ湯葉」と一汁一菜形式のシンプルなもので、京名物の出汁巻き玉子などといった手の込んだものはない。この日の汁は、夏季限定の「夏野菜と鯖の冷汁」の他、「京白味噌の豚汁」と「季節野菜の汁物」の3つあり、この中から選ぶ。あとは有料オプションの中から選ぶというスタイル。オプションには、「山田農園の卵」、「揚げジャガイモ」、「ちりめん山椒」、「古都の無添加ソーセージ」、「焼き海苔」、「オリーブ昆布」などいろいろあるが、今回は、汁を「京白味噌の豚汁」、オプションには、「山田農園の卵」と「ちりめん山椒」を選んだ。
 向付の「汲み上げ湯葉」は、京都「ゆば工房 半升」のものらしい。大粒の結晶塩とワサビ、オリーブオイルでいただくと、クリーミーかつ濃厚な湯葉の味に加え、甘味が感じられて美味しい。続いて、ご飯を盛るお椀を選ぶ。全国の作家ものの茶碗らしいが、僕が選んだのは奈良県の作家のもの。そして、炊き上がったご飯を見せてくれる。ここからは、炊いた白米の変化も味わってもらいたいという趣旨らしい。まずは、一口量のご飯を、何も加えずそのままでいただく。水分がかなり残っているのでツヤツヤで、ほんのりと米の食感が残っていて甘味を感じる。続いて、香の物と2回目のご飯が少量出てきた。先程より水分が落ち着いてきたのがハッキリと分かる。3回目になるといつもの銀舎利の水分と柔らかい食感に近くなった。最期のおこげは、まさに黄金色をした見事なもの。岩塩が振られているので、そのままいただく。カリカリと香ばしく、まさにかき餅の原形である。豚汁は京都らしく白味噌仕立てで、ミョウガや揚げた賀茂茄子、豚肉、揚げた刻んだナスの皮、和がらしなどが入っている。ほんのり甘い白味噌は、いつもの豚汁とは全く異なる京都らしいテイスト。ウルメイワシはお腹の方が苦いので、尻尾の方からいただく。「山田農園の卵」は、生卵の黄身だけがご飯にのせられて出てきた。醤油をかけて食べるとまさに濃厚で、残った黄身に「ちりめん山椒」を入れて食べると更に美味しかった。
 それにしても、ショーの要素を取り入れたこのような体験型の日本食は、外国人だけでなく、インスタ映えを意識する日本人女性にも間違いなく受けるであろう。シンプルな朝食なので、料理の基本を習得したくらいの若い料理人にもオペレーションを任せることができ、しかも、仕込みがほとんどいらない料理なので、17時に終了できるという働き方改革にも合致している。食べた後に歩きながら、よくぞ、このようなニッチな専門店を考え出したなあと感心しきり。ちなみに、予約は電話だけでなく、ネットからウェブ予約もできる。(2019年9月追加)
https://www.kishin.world

東山区小松町555 花とうろホテル祇園1階  
電話番号:075-525-8500
定休日:木曜
営業時間:【第一枠】7時半〜8時50分、【第二枠】9時から10時20分、【第三枠】10時半〜11時50分、【第四枠】12時〜13時20分、【第五枠】13時半〜14時50分
予算:喜心の朝食2500円
アクセス:阪急河原町駅の出入り口1を出て、四条通を鴨川・八坂神社方面に進む。京都四條南座の前を過ぎて進むと、朱色の壁の大きな建物(お茶屋一力亭)が見えるので、その角を右折。花見小路を進み、右側の2つ目の交差点を右折すると常光院が見えるので、その前のホテル。阪急河原町駅より徒歩6分
最寄りのランドマーク:祇園花見小路、お茶屋一力亭、常光院
お勧めポイント:ショーの要素を取り入れた体験型の日本食が味わえる

小さなホテル「花とうろホテル祇園」の1階にありますが、ホテルの施設ではありません。完全予約制の朝食専門店です 開店の7時半までは、鍵が閉まっています カウンター席の周りにはテーブル席がある。カウンター内では、若い女性料理人が調理を担当し、もう一人の若い女性がサービスを担当するという2名体制 テーブル席 先ずは冷たい京番茶が出て、朝食のコース内容の説明をしてくれる。コースは、向付の「汲み上げ湯葉」と一汁一菜形式のシンプルなもので、京名物の出汁巻き玉子などといった手の込んだものはない
この日の汁は、夏季限定の「夏野菜と鯖の冷汁」の他、「京白味噌の豚汁」と「季節野菜の汁物」の3つあり、この中から選ぶ
ご飯以外のおかわりは有料となる 追加のオプションには、「山田農園の卵」、「揚げジャガイモ」、「ちりめん山椒」、「古都の無添加ソーセージ」、「焼き海苔」、「オリーブ昆布」などいろいろある
向付の「汲み上げ湯葉」は、京都「ゆば工房 半升」のものらしい 大粒の結晶塩とワサビ、オリーブオイルでいただくと、クリーミーかつ濃厚な湯葉の味に加え、甘味が感じられて美味しい炊き上がったご飯を見せてくれる ここからは、炊いた白米の変化も味わってもらいたいという趣旨らしい。まずは、一口量のご飯を、何も加えずそのままでいただく 水分がかなり残っているのでツヤツヤで、ほんのりと米の食感が残っていて甘味を感じる 続いて、香の物と2回目のご飯が少量出てきた。先程より水分が落ち着いてきたのがハッキリと分かる 「京白味噌の豚汁」は、豚汁は京都らしく白味噌仕立てで、ミョウガや揚げた賀茂茄子、豚肉、揚げた刻んだナスの皮、和がらしなどが入っている。ほんのり甘い白味噌は、いつもの豚汁とは全く異なる京都らしいテイスト 3回目になるといつもの銀舎利の水分と柔らかい食感に近くなった ウルメイワシはお腹の方が苦いので、尻尾の方からいただく オプションの「ちりめん山椒」 こちらもオプションの「山田農園の卵」は、生卵の黄身だけがご飯にのせられて出てきた 醤油をかけて食べるとまさに濃厚 残った黄身に「ちりめん山椒」を入れて食べると更に美味しかった 最期のおこげは、まさに黄金色をした見事なもの岩塩が振られているので、そのままいただく。カリカリと香ばしく、まさにかき餅の原形である