銀座 鮨 青木
先代の店主・青木 義(よし)さんは、銀座の名店「なか田」で20年修行した後に暖簾分けを許され、京都の木屋町に「なか田」を開業した。現在の店で、鯖の棒寿司や穴子の棒寿司が供されるのは、この京都時代の名残である。その後東京へ戻り、1986年に麹町に「鮨 青木」と店名を改めて店を構え、さらに、1992年に銀座の西五番街通りに移転した。当時、現在の二代目店主・青木利勝さんは、京橋の名店「与志乃」で修行していたが、先代の急逝に伴い、店を継ぐこととなった。僕が「鮨 青木」を初めて訪れたのは、まさにこの時代なのである。その後、青木さんは「鮨 青木 西麻布店」や「銀座 鮨 青木 離(はなれ)」などの支店を出し、多くの寿司職人たちを輩出してきた。しかし、年を重ねるにつれて長年温めてきた理想の店を開きたいという思いが募り、本店を閉め、「銀座 鮨 青木 離(はなれ)」だったこの場所を、新たに「銀座 鮨 青木」としてオープンさせた。以前の店に比べると、カウンター8席とこぢんまりとなった分、客に目が行き届くようになり、全ての客に青木さんの握りが提供できるようになった。最後に理想の仕事をしたいという思いは、大箱だった四谷の「オテル・ドゥ・ミクニ」を閉め、新たに即興フレンチの小さなカウンター席の店を開こうとしている北海道出身の三国清美シェフと共通の思いを感じさせる。僕の知る多くのシェフたちも、年を重ねるにつれて営業時間を短くしたり、客数を制限したりして自分のペースでやっている。やはり、年をとった自分とどう折り合いを付けて仕事を続けていくのか?そこはモチベーションが大事なのである。
この店のアテとして最高なのが、厚めに切られた鰹の刺身。この他に、寒い季節のアラの炙りや蒸し鮑、煮穴子(注*時期や産地によっては少し泥臭いことも)、ヒラメの昆布締め、白エビあるいは甘エビの昆布締め、タコの桜煮なども美味しい。握りでいただきたいのは、ヒラメや真鯛などの白身、そして本鮪の漬けや中トロ、穴子(泥臭くなければ塩とタレ両方で)、小柱、車海老、鯵、コハダ、煮蛤、そして、締めの鉄火巻きか中トロ巻きなど。お任せなので、とりあえずはそのままいただき、最後に食べたいものがあったら追加するのがベスト。また、寿司には「煮きり醤油」を塗ってくれるが、塩味が足りないなあと感じる方は、煮きりを少し多めに塗るよう言ってもらっても構わない。店主の青木利勝さんは、気さくで陽気なスポーツマンであり、銀座といえども肩肘張らずにリラックスできる店なのである。
ちなみに、これまでのグルメバイブルの方針として、複数の握り手のいる大箱店は基本的に掲載しないか、どうしても掲載する場合は、星を落として掲載してきた。この店も同様であり、今回2つ星から3つ星へ評価を上げた理由は、まさにそこにある。(2023年3月更新)
https://www.sushiaoki.jp
中央区銀座6丁目7−7 IWATSUKI BLDG III4階
電話:03-3289-1044(10時〜22時に予約受付)
定休日:日曜、年末年始(不定休あり)
営業時間:12時~14時、17時~22時(いずれも閉店時間)
予算:握りのおまかせ2万円、おつまみと握りのおまかせ28000円、スペシャルおまかせ35000円(スペシャルのみ仕入れ状態により変動)、【平日ランチ限定の特別メニュー】おまかせ握り11000円、特上ばらちらし6500円、吹き寄せちらし6500円
アクセス:東京メトロ(銀座線、丸ノ内線、日比谷線)銀座駅A1番出口を出て、2つめの角「ジョルジオ・アルマーニ」と「ヴォッテガ・ヴェネタ」の間を左折。「ピエール・マルコリーニ」の前を通り、1つ目の交差点を過ぎると、交詢ビルディング前の右側のビル。東京メトロ銀座駅(4丁目交差点)から徒歩3分
最寄りのランドマーク:交詢ビルディング
お勧めポイント:華やかで本物の銀座の寿司を味わいたい方にお勧め
写真の真ん中の明るいビルです
古いエレベーターにのって4階まで上がると・・・
こんな感じ。暖簾をくぐると・・・
店の扉があります
扉を開けると、L字型のカウンター8席という小さな店(店主の青木利勝さん)
まず出てきたのは、「毛蟹とキャビアライムのジュレ」。言うまでも無く美味しい
続いて「2種の鰹の刺身」が出てきた。いつもの厚切りの鰹とはビジュアルも食感も異なっている。一切れはそのままの鰹で、もう一切れは燻製仕立ての鰹らしい。どちらもタマネギ醤油でいただく。やはり、いつもの厚切りの方が好みだ
「黒イチジクと2種のウニにフランス塩をかけて」
アップで見ると、左がバフンウニ、右がムラサキウニであることが分かる。ダイレクトに舌に押し寄せる塩味と後からやってくるイチジクの甘い香りが、とろけるウニと最高のハーモニーを魅せる
「タコの桜煮と蒸し鮑」は、本文でも書いたが、この店の定番のアテ
「北海道産のヒラメと青森産の天然本マグロ」。写真からもヒラメの弾力や本マグロの美味しさが伝わってくるよう
「焼き穴子のキャビア添え」。美味しいけど穴子が少し泥臭い。青木さんは対馬産だと言っていたが、魚屋に産地偽装されているのでは?と思いたくなるくらいの味。それにしても、穴子は季節によっても当たり外れがあり、食べてみるまで分からないリスキーな素材だ
「岩手県産松茸と鱧のお椀」。香りも良く、口の中で鱧の身がホロホロと崩れて美味しい
ここからは握りがスタート。まず出てきたのは「出汁イクラと塩昆布のミニ丼」
「炙った白甘鯛」。脂がのった白甘鯛を炙ることで香ばしさが加わり、本日ナンバーワンの握りだった。塩とスダチでいただく
「炙った黒むつ」。繊維が細やかで脂ものっている
「本マグロの赤身」
「本マグロの中トロ」
「本マグロの大トロ」
「スミイカ」は、塩とスダチでいただく
「コハダ」。海老のおぼろを挟んでおり、実に江戸前らしい握りだ
「江戸前の根付き鯵」
「赤貝」。身が厚く最高レベルの赤貝
「車えび」は茹でたてで、甘く香り高い
「煮穴子」は、身がとろけて香ばしく最高だが、素材に関しては前述したとおり