珈琲美美(こーひーびみ)

 自家焙煎された深煎りのハイローストで有名な珈琲店。シアトル系コーヒー全盛の現在では考えられないが、この店が開店した1977年当時は、未だアメリカンコーヒーが全盛の時代であった。当初はなかなか客がつかず大変だったらしいだが、次第にその美味しさが受け入れられ、美味しいという噂が九州全土へ、さらに全国にまでとどろいたという。僕は20年以上前に山本益博さんの著書でこの店のことを知り、その頃に一度訪れたことがある。その頃は現在の店でなく、確か大名の近くにあったような気がする。しかも、こんなに現代的な綺麗な店ではなく、昭和の風情を感じさせる下町の純喫茶といった感じであった。3年半前に、護国神社と福岡城址(大濠公園・鶴舞公園)に挟まれた緑の多いこの地に移転したそうである。店の1階には大きなロースターが置かれ、コーヒー豆を販売するショップが、そして、2階に山小屋風の喫茶室がある。2階に上がると、年老いて今なお元気なマスターの森光さんが座っていた。しかし、現在は奥さんなのか?お母さんがドリップを担当しているようだ。
 この店のコーヒーは、ネル・ドリップで抽出される。これは、森光さん修行した東京の名店「吉祥寺もか」の標さんが、ネル・ドリップの先駆者であったことが影響している。森光さんは「モカ」のスパイシーな香りをとことん追求し、イエメンやエチオピアまで何度も足を運んだという。なので、コーヒー豆はエチオピア産とイエメン産のモカがメインで、モカだけでも5種類もある。僕の一押しであるイエメン産「バニーマタル・モカ」は、ビターな中にも甘い余韻が感じられ、“モカ=酸味”という僕のモカの概念を変えてくれた。これに対し、エチオピア産の「ハラール・モカ」は、これにほんのりとした柔らかい酸味が加わり、僕のイメージに近いモカであった。1番人気はブレンドの「中味」 で、ブレンドは、「淡味 → 中味 → 濃味 → 吟味 → 趣味」の順でローストが強くなる。ハイロースト好きの僕は、今回「濃味」を注文。酸味と苦みのバランスが良く、ふくよかな香りで、神戸「御影ダンケ」のバターコーヒーを彷彿させた。コーヒーとともに味わいたいのは「フルーツケーキ」。 シットリときめ細やかで、中のドライフルーツのバランスが絶妙。甘さも丁度良く、複雑さと奥深さもあり、ありそうでなかなかない完成度の高いフルーツケーキである。メニューの中で最も目を引くのは、「水だしギシルコーヒー」。これはコーヒーのルーツ国・イエメンで日常飲まれている飲み物で、コーヒー豆を包む“穀(ギシル)”の部分を使ってコーヒーを抽出し、それにスパイスと砂糖を加えた温かい飲み物。コーヒーと言うよりもむしろ、「チャイ」や「生姜湯」に近いイメージの飲み物。もしも、ハイローストコーヒー好きの方へ贈るなら、1階のショップでコーヒー豆を購入してお土産とすれば、素晴らしい福岡土産となること請け合い。(2012年11月追加)

福岡市中央区赤坂2-6-27  
電話番号:092-713-6024 
定休日:月曜(但し、祭日の場合には翌日) 
営業時間:11時~19時半(但し、2階の喫茶室は19時まで) 
予算:バニーマタル・モカ750円(100g 1000円)、濃味630円(100g 750円)、フルーツケーキ380円 
アクセス:地下鉄空港線・大濠公園駅5番出口を出て堀に沿って明治通りを進む。すぐに信号のある大手門交差点を右折して、大濠公園の中に入る。平和台競技場前の信号を過ぎ進むと、右側に住宅街が見えてくる。更に進むと、左に池と右に駐車場が見えてくるので、突き当たり信号(護国神社前交差点)を左折するとすぐ左側。大濠公園駅より徒歩15分。 
最寄りのランドマーク:護国神社 
お勧めポイント:ハイローストタイプのコーヒーとしては、日本最高レベルの珈琲店