祇園 さヽ木(ささき)

 「祇園 さヽ木」はこれまでに2回移転し、この店で3店舗目となる。これまでで最も広く閑静なこの地に移転してきたということは、この地こそ店主・佐々木さんが理想とする場所なのであろう。今回、僕はこの店となってから初めての訪問である。
 細長い通路を抜けると入り口があり、靴を脱いで上がると床暖房が心地よい。奥に進むと手前には広いカウンター席があり、奥には個室を見ることができる。カウンター前の棚にはケータイ禁止のマークとインテリアのように掛けられた包丁が目に付く。また、和の趣が強かったこれまでの店とは異なり、BGMにはジャズが流れ、中央には日本料理店としては珍しくオーブン釜がある。特に目を引いたのは、カウンター前に置かれた3つの大きなまな板。後で分かったことだが、これは店のスペシャリティである握り寿司を店主が握るときに、それぞれの客の目の前で移動して握り、直接手渡すためのものらしい。
 この店でのお約束は、奥の個室も含めた食事の一斉スタート。この日の夜は18時半スタートであったが、これは「未在(→ グルメバイブル未掲載)」や 「リストランテ 245 祇園(→ 京都グルメバイブル・イタリアンの頁を参照)」 など、一部の京都の人気料理店で見られるシステム。しかし、この「祇園 さヽ木」での意味合いは多少異なっている。この店では、これから始まる食のエンターテイメントを、ゲスト全員が一体となって体験してもらうためのものなのである。
 客が揃うと、先ずは店主の佐々木さん自らがゲスト全員に挨拶をし、さらにコース半ばにはそれぞれの客と乾杯して一体感を高めるなど、まさに体育会系のノリなのだ。料理の前半の説明は店主自らが行い、その滑らかな話術はまるでカリスマ実演販売員のよう。また、通常は見えないところで行う皿の盛りつけなどを敢えて客の目の前で行うなど、料理への期待が一層高まるようなライブ感満載の演出なのである。
 さらに、佐々木さんの凄いところは、どうすれば素材を美味しく味わえるかということを熟知していること。つまり、料理の本質が分かっているということなのである。例えば、冬に登場する「ズワイガニの蟹チャーハン」は、決して中華料理人が作るパラッとした本格的ものではなく、握り寿司も熟練した寿司職人が握るものに比べると劣るが、しかしそれを感じさせないくらい素材を美味しく食べさせてくれるのである。それは最後のデザートに至るまで同様で、佐々木さんは今まさに絶頂期を迎えている料理人ではないだろうか。この日の最後のフィナーレを飾ったご飯は「ズワイガニの蟹チャーハン」と「中トロ漬けの手巻き寿司」。しかもおかわりができるので、たとえ大食漢の方でも食べた〜!!という大きな満足感が得られる。佐々木さんの軽妙なトークも美味しさを倍増させ、これぞまさに食のエンターテイメントである。これを楽しむには絶対に夜に行くべきで、しかもカウンター席で頂くことが絶対条件である。
 また来たい!!という思いに駆られるのか、何組かの客は帰り際に次回の予約をしていた。なので、この店を訪れる客の半分以上がリピーターと言おうか、常連客であり、僕も取材さえなかったら次回の予約をして帰りたかったほど。2014年度版ミシュランでは何故か2つ星であったが、どうしてなの?と誰もが疑いたくなるほどの素晴らしい店である。
 日本酒は常時10種類くらいあり、人気の「十四代」や「初亀」なども置いている。また、グラスシャンパンなどワインも置いているので、外国人客にも受けそうだ。ちなみに、京都でも1、2を争う人気店なので、かなり早めの予約が必要である。また、前述のように一斉スタートなので、それを確認するリコンファームの電話が2〜3日前にあるが、それほど時間厳守なのでご注意願いたい。(2014年4月更新)

京都市東山区八坂通大和大路東入小松町566-27   
電話番号:075-551-5000 
定休日:日曜、第2月曜、不定休あり
営業時間:【昼】12時、【夜】18時半(完全予約制)
予算:【昼】6000円、【夜】18000〜20000円(仕入れる素材により変動)
アクセス:阪急河原町駅の出入り口1を出て、四条通を鴨川・八坂神社方面に進む。京都四條南座を過ぎた角を右折し、500mほど進むと右に「えびす神社」、左に「建仁寺」の外壁が見えてくるので、壁に沿って角を左折する。すぐに建仁寺の一つ目の門が見え、さらに二つ目の門が見えたら右側に「祇園 末友」が見えるので通り過ぎ、右側に「祇園丸山 建仁寺店」が見えたらその向かえ(左側)。阪急河原町駅より徒歩10分。 
最寄りのランドマーク:京都四條南座、えびす神社、建仁寺
お勧めポイント:今まさに絶頂期の佐々木さんの日本料理店