鮨 草平(すし そうへい)

 2022年7月に開店した円山の寿司店。店主の松倉さんは東京四谷にある「すし匠(→ 銀座グルメバイブル・寿司の頁を参照)」の出身。すし匠の大将である中澤さんが現在いる「ザ・リッツ・カールトン・レジデンス、ワイキキビーチ・すし匠」や東京ミシュラン3つ星「鮨よしたけ」店主・吉武氏監修の香港「すし志魂」でも働いたことがあり、同じ円山にある「すし 宮川(→ 札幌グルメバイブル・寿司の頁を参照)」の店主とも、香港で一緒に働いていたという。
 開店祝いの花々が並ぶ通路を抜けて扉を開けると、美しい白木のカウンター席が広がる。店主の流儀として、店内撮影とつまみの写真撮影がNGなため、残念がながら握り以外の写真をお見せすることはできないが、銀座の寿司屋にも負けないくらいの雰囲気がある。また、アルコール類は一通り揃っているが、ビールは2種類の小瓶のみしかない。これに対し、日本酒は常時16〜17種類と充実しており、そのセレクトも素晴らしい。これは日本酒好きの店主が実際に飲んで選りすぐっているためで、半合からいただけるのも良い。コースは、つまみと握りのお任せ1コースのみである。
 つまみのスタートは「アサリとシジミの潮汁」。加えられた柚子皮の香りが吹き飛ぶくらい濃厚で、貝の旨味に溢れている。2品目は御飯で、江戸前の古典的な仕事である「ヤリイカの印籠詰め」。銀座の「小笹寿し(→ 銀座グルメバイブル・寿司の頁を参照)」ほどの身の柔らかさこそなかったが、柚子のキリッとした香りとサッパリ感が良かった。3品目は刺身で、「道南噴火湾産のマツカワガレイ」。弾力があって歯応え抜群で、昆布締めによる旨味も加わって最高だった。4品目は、「三陸産・石垣貝(エゾイシカゲガイ)の炙り」。とり貝とホッキ貝を併せたような食感と香りが良かった。5品目は、「ウニの冷製茶碗蒸し」。生ウニと出汁のジュレを混ぜて茶碗蒸しと一緒に食すと、味の相乗効果による間違のいない美味しさとなる。6品目は、「スイカの奈良漬けとあん肝」。あん肝のネットリとしたコクと奈良漬けの塩味や甘味がよく合う。7品目は、「カマスの焼きもの」。フンワリとした繊細な白身に、カマスの骨でとった出汁あんかけのエキスが加わって、これも秀逸。8品目は、「道南噴火湾産の毛蟹・イバラガニの内子がけ」。今や幻となってしまったイバラガニの濃厚な内子が、淡泊な毛蟹をさらにパワーアップしている。9品目は、「蒸しアワビの肝ソース」。通常の肝ソースと違って全く苦みがなく、むしろクリーミー。柔らかく蒸されたエゾアワビと最高の相性をみせる。10品目は、「アワビの肝ソースをかけた酢飯」。酢飯の酸味により、アワビの肝ソースの旨味の輪郭が更に増幅している。11品目は、「メヌケの五穀米リゾットかけ」。汁でなく、敢えてメヌケの旨味を蓄えたリゾットをかける事で味の重層感が半端なく、今回のコースの中で、ナンバーワンの美味しさであった。12品目は「根室産のモズク酢」。繊維が細く、沖縄の養殖モズクにはないシャキシャキとした食感を感じる。
 ここからは握りとなる。この店では「すし匠」に倣って、白酢と赤酢の2種類のシャリを用いている。基本的に、白酢のシャリは淡泊なネタ用に、赤酢のシャリは脂ののったネタに使用している。どちらかというと、白酢のシャリは、しっかりとした酸を感じる古典的なシャリであり、僕の好みは赤酢のシャリの方。
 まずは「鳥取産の白イカ」から。白イカとはケンサキイカのことで、甘くとろみがある。続いて、「熟成したアラ」。夏にアラとは珍しいが、熟成していながらも、しっかりとした繊維を感じて旨味もある。「春子の黄身酢漬け」は、春子がふんわりと柔らかく、黄身酢の酸のバランスも良い。「マスノスケ(北海道で獲れるキングサーモンで、オオスケとも呼ぶ)」は熟成感があり、タマネギがアクセントになっている。ここで、「中トロ(腹側)」、「中トロ漬け(背側)」、「大トロ(じゃばら)」と本マグロが3つ続いたが、どれも夏らしいあっさりとしたマグロだった。「天草産のコハダ」は、酸味や塩味がしっかりとしていてやや脱水気味。続く「熟成した鯖」も同様。「バフンウニとムラサキウニの軍艦」は、濃いバフンウニと瑞々しいムラサキウニの重層感が新鮮だった。「車海老」は、おぼろではなく、敢えて海老味噌を挟んでいる。茹でて常温管理された海老の香りが素晴らしく、エビ味噌が加わることで、車海老の甘みと香りがより引き出されていた。「煮穴子」はふっくらと香ばしく、泥臭さもなく良かった。さらに、「魚出汁の味噌汁」、「玉子焼き」と続いて終了となった。ちなみに、温かいお茶は、信楽出身の作家の湯飲みで供される。これは店主のオーダーによるオリジナルの湯呑みで、熱さを感じないようかなり分厚く作られており、驚くほど重たい。女性には重たすぎるのでは?ということで、現在新たに一回り小さい物を発注しているとのこと。
 光りものの締め具合と一部の酢飯に物足りなさを感じたので今回は2つ星としたが、限りなく3つ星に近い2つ星という評価である。つまみも充実しており、雰囲気も含めて、十分値段に見合った満足感が得られる。開店間もない現在は容易に予約がとれるが、近い将来は、「すし 宮川」のような人気寿司店になるのではないかと思う。なお、この店は完全予約制であり、2日前までの予約が必要となる。また、前日キャンセルは50%、当日キャンセルは100%のキャンセル料が発生するので、ご注意を。(2022年8月追加)
https://sushi-sohei.com

中央区南2条西28丁目1−10 エビスビル 1階   
電話番号:011-215-7757(完全予約制で2日前までの予約が必要、前日50%、当日100%のキャンセル料が発生する)
定休日:不定休
営業時間:18時と20時半の二部制
予算:お任せコースのみ28000円
アクセス:札幌地下鉄・東西線円山公園駅3番出口を出て、円山公園方面へ向かう。ケンタッキーフライドチキンの交差点を左折し、環状通を進む。六花亭・札幌リラベル教会の交差点を過ぎると右側に見える。円山公園駅から徒歩5分
最寄りのランドマーク:六花亭・円山店、札幌リラベル教会
お勧めポイント:つまみも秀逸な本格江戸前寿司の店

円山エリアの環状通沿いにある店の前には開店祝いの花々が 開店祝いの花々が並ぶ通路を抜け・・・ 扉を開けると、美しい白木のカウンター席が広がる。店主の流儀として、店内撮影とつまみの写真撮影がNGなため、残念がながら握り以外の写真をお見せすることはできないが、銀座の寿司屋にも負けないくらいの雰囲気が つまみの後は握りとなる。まずは「鳥取産の白イカ」から。白イカとはケンサキイカのことで、甘くとろみがある 続いて、「熟成したアラ」。夏にアラとは珍しいが、熟成していながらも、しっかりとした繊維を感じて旨味もある「春子の黄身酢漬け」は、春子がふんわりと柔らかく、黄身酢の酸のバランスも良い。この後は、「マスノスケ(北海道で獲れるキングサーモンで、オオスケとも呼ぶ)」であるが、写真撮影をし忘れた。熟成感があり、タマネギがアクセントになっている ここから本マグロが続く。まずは「中トロ(腹側)」 「中トロ漬け(背側)」 「大トロ(じゃばら)」。3種どれも夏らしいあっさりとしたマグロだった 「天草産のコハダ」は、酸味や塩味がしっかりとしていてやや脱水気味 続く「熟成した鯖」も同様 「バフンウニとムラサキウニの軍艦」は、濃いバフンウニと瑞々しいムラサキウニの重層感が新鮮だった 「車海老」は、おぼろではなく、敢えて海老味噌を挟んでいる。茹でて常温管理された海老の香りが素晴らしく、エビ味噌が加わることで、車海老の甘みと香りがより引き出されていた 「煮穴子」はふっくらと香ばしく、泥臭さもなく良かった さらに、「魚出汁の味噌汁」「玉子焼き」と続いて終了となった