鰻と言えば、関西や関東のイメージがあるが、名古屋を歩けば街の至る所で鰻屋を見かける。調べてみると、人口辺り最も鰻屋が多いのは三重県・津市のようである。恐らく、愛知県や岐阜県を中心とした地域とその周辺の三重県北部や静岡県西部にかけての地域では、僕らの想像を超える鰻文化が根付いていて、鰻はよく食べる身近な食べ物なのであろう。名古屋の鰻は、基本的に蒸さずに焼く関西風。従って、皮がパリッとしていて焦げ目が香ばしい。「ひつまぶし」は、これを細かく刻み、お櫃のご飯にまぶしてかき混ぜて食べるためにこう呼ばれる。蒸す作業を行う関東風だと身が柔らかくて刻めないため、名古屋駅近くにある「うな善」のような関東風を出す店は、刻まずに供する。容器にお櫃を用いることやかき混ぜることが、結果的に鰻を蒸すという工程を加えるため、関西風の焼き方は「ひつまぶし」と実に相性がいい。1杯目は山椒をふりそのまま鰻丼として、2杯目は海苔や山葵、シソ、ゴマなどの薬味を加えて、3杯目は出汁を注いでお茶漬けにして食べる。どの店も通常の「ひつまぶし」に加え、「上」、「特上」などのランクがあるが、これは鰻の質とは関係なく、鰻とご飯の量が違うにすぎない。通常はランクが上がると鰻の量が1.5倍くらいになるようだ。行列店ではまずは並ばずに店内に入り、店員に名前を告げるか名前を書かなければならないこともあるのでご注意を。それにしても、前回の取材を合わせると、これまで計二十数軒の鰻店を取材し、遠くは一宮市や刈谷市の有名店までも訪れた。